百貨店の卒業 「あの店、なくなるらしいよ」の時代

2月も終わり、いよいよ卒業シーズンがやってきます。卒業といえば学生生活の大きな区切りを思い浮かべますが、お店にも「卒業」、つまり閉店があります。今月16日に新宿ミロードが閉店。28日には新宿アルタと原宿アルタも閉店しました。どちらも大学生になって新宿駅に通いだしてから度々訪れていた場所なので、とても寂しく感じます。

最近、百貨店の撤退が相次いでいます。昨年7月には、私の生まれ故郷である岐阜の高島屋が閉じました。子どもの頃、両親とよく訪れていたので、そのニュースを聞いたときは一つの時代が終わるように感じました。

閉店の背景には、売上の低迷や建物の老朽化など、さまざまな要因が指摘されます。しかし、私は特に「若者の百貨店離れ」が大きな理由の一つではないかと思います。ファストファッションの流行や、コロナ禍でのオンラインショッピングの普及により、若者がデパートで買い物をする機会は減っているように感じます。並んでいる商品は値段が高く、若者にとって手を出しにくいという側面もあるでしょう。

地方百貨店の状況はさらに厳しくなっています。地元を離れる若者が多いため、そもそも店頭に足を運ぶ人が減っているのです。若者のファッションはトレンドの移り変わりが早く、それに対応し続けるのは簡単ではありません。ブランドを柔軟に入れ替えられる店なら対応できますが、すべてがそうとは限りません。特に人気ブランドは都市部の大型店を優先して供給されるため、地方にはなかなか回ってこないという現実もあります。

こうした状況が続くと、若者向けのテナントも売上が低迷します。特に子育て世代にとってはショッピングセンターの方が利便性が高いため、百貨店には足を運ばなくなります。ショッピングセンターには、駐車場が完備され、子ども向けの施設や飲食店も充実しているなど、家族連れにとって利用しやすい環境が整っています。一方で、百貨店は高級感を重視するあまり、そうしたニーズに対応しきれていない現状があります。最終的には高齢の顧客が中心となり、利用者の年齢層が偏ってしまう傾向が見られます。

経済産業省の調査によると、百貨店の主要な顧客層では50代以上が大半を占めています。特に60代以上の割合が増加しており、若年層の取り込みが課題となっています。かつては幅広い世代に利用される商業施設でしたが、現在は高齢化が進み、若者の来店頻度が減少しているのです。

このような傾向は、2010年頃から地方だけでなく、都市部を含めて全国の店に見られるようになりました。近年では、百貨店の在り方を見直す動きも出ています。例えば、高級スーパーや飲食店を誘致することで、新たな顧客層を開拓しようとする会社もあります。また、一部ではオンラインストアを強化し、店頭での手厚い接客をオンラインでも体験できるような試みが進められています。

時代の流れとともに、私たちの買い物のスタイルも変化しています。百貨店がこの先どのように生き残っていくのか、その動向を注視していきたいと思います。

 

 

参考記事:

2月28日 日経電子版「新宿アルタ45年の歴史に幕 三越伊勢丹、百貨店集中

2024年9月20日 日経電子版「新宿ミロード、25年3月に閉館 再開発で40年の歴史に幕

 

参考サイト:

NHK 岐阜NEWS WEB 「岐阜県内唯一の百貨店 『岐阜高島屋』閉店 47年の歴史に幕

経済産業省 第3回 百貨店研究会「消費者意識の変化と百貨店利用等に関する調査結果