フランス人の友人が8月下旬に来日します。どんなことをしたいか前もって尋ねてみました。落語を聞いたり、アニメイトで買い物をしたり、とリクエストは絶えません。特に、彼女が熱い視線を送るのは線香花火。海外ではこうした手持ち花火はあまり馴染みがありません。日本のドラマやアニメに描かれる夏の風物詩を味わいたいようです。
その線香花火を手掛けるメーカーは、全国で3社を残すのみとなりました。その一つが福岡県みやま市の筒井時正玩具花火製造所。3代目となる花火職人の声が今朝の新聞で紹介されています。その記事から奥深さを知ることができました。1本わずか0.08グラムの中に、松の木の根をいぶした松煙、硝石や硫黄などが配合されています。 その配分は全て職人の経験と勘だより。ちょっとした違いが火の回り方、花火の美しさに影響するのです。
現在、線香花火は少子化や町中での火気制限などが相まって需要は低迷。さらに1980年以降、安価な中国産が大量に輸入され、国産品は次第に姿を消しています。たしかに中国産が1本あたり2~3円なのに対し、国産は60円以上ときわめて割高です。私も、どうせ煙になって消えてしまうものなら安く済ませたいと思います。多くの日本人にとって、こと花火に関しては「国産は安心・安全」というセールスポイントは弱いかもしれません。そこで、外国人観光客に目を向けてはどうでしょうか。
火を点けてからしばらくくすぶり、やがてゆっくり火玉が成長し、光の矢束となりあちこちに散る。その後、力が弱まって垂れ曲がり、静かに落ちていく・・・。儚く、しおらしい姿に外国の方も心を奪われるはずです。
そもそも線香花火が日本で作られ始めたのは江戸時代。日本の伝統文化の一端を感じることもできます。残念なのは、花火はどんな小さくても火薬が含まれるのでお土産として持ち帰ることができない点です。ならば、観光客が気軽に楽しめる国内スポットを紹介する英文パンフやサイトを準備できないでしょうか。フランス人の友人が喜んでもらえるものをネットで探していますが、なかなか見つからず困っています。楽しむ環境が整えば、4年後のオリンピックで訪れるだろう多くの観光客に日本の繊細な文化を堪能してもらえる隠れた逸品となるはずです。
参考記事:日本経済新聞 (東京14版)40面 文化 「わら線香花火 輝き消さぬ」