先日、第2回「みんなの建築大賞」の結果発表があり、茨木市文化・子育て複合施設 おにクル(設計:伊東豊雄建築設計事務所・竹中工務店JV)に授与することとなりました。そして2位となったジブリパーク 魔女の谷(設計:スタジオジブリ[デザイン監修]、日本設計)に、「建築」への関心を新たな層に広げたことを称えて特別賞が授与されました。
そもそも「みんなの建築大賞」とはどのようなものなのか。まだ歴史が浅いものですが、現代にふさわしい工夫が見られます。
「新しく造られた建築を対象とする賞には、1949年に設けられた『日本建築学会賞(作品)』などがあるが、建築界の話題にとどまるのが実情。それが『建築文化への理解』が深まらない一因でもあるとして、建築系の編集者や建築史家ら約30人が建築賞を発案した。自分たちが推薦委員となり、昨年完成した建築から『この建築がすごいベスト10』を選んで発表。大賞は期日までに『いいね』(投票)を最も多く付けたものとした。広報には趣旨に賛同した文化庁が協力した」(読売新聞,2024)。
大賞は、「X」「Instagram」「Googleフォーム」の3つの一般投票の総計で最も多くの票を獲得した建築に与えられるもので、若者を初めとした多くの人に関心を持ってもらう狙いがうかがわれます。
「『いいね』機能を使っているので、十分な客観性や公平性があるとは言い難いし、写真映えで選ばれる可能性もあるが、日経アーキテクチュア編集長などを務めた編集者の宮沢洋さんは『どれが大賞に選ばれてもおかしくない10件を候補にしているので質は担保されている』と話す。組織票の懸念もあるが、『むしろどんどん入れて下さい』とその熱量に期待する。本屋大賞が当初は直木賞を意識していたのとは異なり、昨年の大賞作を受賞した秋吉浩気さんが正統性や権威より『推し活だと思った』と言う通り、あるいはかつてのAKBグループの選抜総選挙のように、建築界を盛り上げるための試みなのだろう」(朝日新聞,2024)。
筆者は、半年ほど前にジブリパーク 魔女の谷を訪れました。細部まで作りこまれた世界観と映像で見たままというリアリティに圧倒されました。
これまで建築に関心がなかった筆者ですが、「みんなの建築大賞」を機に建物を強く意識して見るようになりました。SNSの写真や動画だけでは分からない魅力を追い求めて、これからも建築を巡っていきます。
参考記事
2024年4月21日付朝日新聞「「みんなの建築大賞」吹くか新風 誰でも「いいね」で投票、参考は本屋大賞」.
2024年3月13日付読売新聞「SNS投票で選ぶ「みんなの建築大賞」 第1回受賞作発表」.「第2回『みんなの建築大賞』結果発表&推薦委員会全コメント集」〈https://mag.tecture.jp/event/20250210-jaa2-2/〉。