高校授業料の無償化に向けて、自民、公明、日本維新の会の3党が協議を進めています。特に学費の高い私立高校に通う生徒への支援拡充が焦点となっており、国の就学支援金の上限を2026年度から引き上げる方向で調整が行われています。現在の上限額は年間39万6000円ですが、維新は大阪府の制度に倣い63万円への引き上げを主張しています。一方、自民党は大幅な増額に慎重な立場を取っており、今後の協議で妥協点を探ることになりそうです。
私自身、私立高校に通っていましたが、学費や入学時の初期費用の高さに両親や同級生が困っていたことをよく覚えています。授業料だけでなく、制服や教材費、修学旅行費などもかかり、家庭の経済状況によっては大きな負担でした。一方で、公立高校に通う友人たちは、学費をそこまで気にしている様子はありませんでした。高校の選択が家計に大きく影響する現実を、身をもって感じた経験があります。
現在、東京都では私立高校も含めた授業料無償化が進められており、24年6月20日から所得制限を撤廃し、都内私立高校の平均授業料相当額である48万4千円を上限に支援が開始されました。 これにより、都内在住で私立校に在学する生徒の保護者は、所得に関係なく支援を受けられるようになりました。しかし、神奈川県をはじめとする他の自治体では無償化の動きはあまり進んでいません。住んでいる地域によって教育の選択肢が変わってしまう現状には、大きな疑問を感じます。家庭の経済状況だけでなく、自治体ごとの政策の違いが子どもの進路に影響を与えるのは、本来あってはならないはずです。
また、無償化が進んでいる自治体には、それを目的に移転してくる家庭が増える可能性もあります。特に、教育の選択肢が広がる東京都や大阪府のような自治体では、経済的な理由で進学をあきらめるケースが減ることが期待されます。しかし、それが地方からの人口流出につながり、都市と地方の格差がさらに広がる懸念もあります。教育の充実が、結果的に地方の衰退を加速させてしまうとすれば、新たな問題を生み出すことになります。
一方で、無償化をどこまで広げるのかという問題もあります。維新は所得制限を撤廃し、誰でも支援を受けられるようにすることを求めていますが、これは国の財政に大きな負担を及ぼす可能性があります。現在でも増大する社会保障費への対応が課題となるなか、高校の授業料無償化を恒久的に実施するには、安定した財源の確保が不可欠です。もし所得制限を完全になくしてしまえば、財政の負担が増し、他の分野の政策にも影響を与えかねません。例えば、社会保障や医療費補助の削減といった議論につながることも考えられます。無償化を進めること自体は教育の機会を広げる重要な施策ですが、それをどのように持続可能で公平な形で実現するのかが問われています。
高校無償化の拡充は、多くの家庭にとって関心の高いテーマであり、教育の機会均等を実現するための重要な施策です。しかし、自治体ごとの取り組みの差や、財政負担の問題など、解決すべき課題は多く残っています。全国どこに住んでいても、経済的な理由で進学をあきらめることのない制度設計が求められています。今後、3党の協議がどのような結論を導き出すのか、そして自治体ごとの無償化の動きがどのように広がっていくのか、引き続き注目していきたいと思います。
参考記事・サイト:
2月14日 日経電子版「高校無償化、私立の支援金引き上げ 自公維で増額幅詰め」
東京都庁公式HP 報道発表「所得制限なく私立高校等の授業料支援が受けられます」