学校や駅、商業施設で女性トイレだけ長蛇の列ができている光景を目にしたことはありませんか。ジェンダー問題への関心は年々高まっていますが、トイレの男女平等についてもここ数年間議論されています。
2025年1月30日に朝日新聞デジタルで配信された記事では、女性がトイレを利用する際に待つことを余儀なくされる現状への疑問が取り上げられていました。東京都内に住む行政書士の百瀬まなみさん(60)はJR倉敷駅(岡山県)でトイレを利用するために約5分、順番を待ったそうです。入り口にあるトイレ案内図を見ると、男性用トイレが小便器4、個室3なのに対して、女性用は個室が4つだけでした。「女性は衣類を上げ下げする時間が必要で、生理の際にはナプキンの交換などで時間がかかる。なのに数が少ないなんて」と男女のトイレの違いに思わず驚いたそうです。
以降、外出した際には欠かさずトイレの便器数をチェックしていると言います。JR八王子駅(東京都)では女性用個室が6、一方の男性は個室7、小便器10の合計17で、女性の2.83倍。面積はトイレ案内図上で見る限り、それほど変わらないようでした。百瀬さんは「面積が同じであれば『平等』かもしれないが、『公平』とは男女ともに待ち時間が同じになることでは?せめて便器数を男女同数にしてほしい」と主張しています。
男女のトイレ格差の問題は長年改善されていない問題です。2018年にも読売新聞で議論されていました。各地で公共トイレを清潔にするなど快適化を目指す動きが広がっていても、行列問題はほとんど改善が見られないと指摘されています。
この記事でも行列問題の背景には実態にそぐわない「男女平等」にあると指摘していました。公共トイレの多くが左右対象の作りで、男性トイレ、女性トイレが同じ面積で作られていることが影響しているのです。
中日本高速道路(ネクスコ中日本)が2014年に行なった調査では、男性が小便器を利用する時間が平均37.7秒であるのに対し、女性の個室トイレの平均利用時間は93.1秒と、男性の約2.5倍の時間がかかっています。女性のトイレは常に個室が必要で、男性よりも所作が多いからです。
筆者も女性トイレのみ列ができているという状況には何度も遭遇しています。大学の講義と講義の間には10分間の休憩が設けられています。女性トイレには学生が5人ほど並んでおり、自分の番を待っていたため授業に遅刻したこともありました。あまりにも並んでいる場合は他の階に移動して空いているトイレを利用することもありますが、これも時間がかかります。
また、アーティストのライブや野球観戦で京セラドームに行った際には、あまりの列の長さに驚きました。開演前にはトイレに行く人が殺到し、会場のスタッフが整理していることもあります。ドーム内で女性トイレが混雑することは当たり前と思われているため、駅や隣接する商業施設で事前にトイレを済ませておく人も多いです。しかし、そこでも女性トイレは常に列が伸びており、10〜20分待つこともありました。他方の男性トイレでは並んでいない場合がほとんどです。たまたま女性の参加者が多いイベントだったのかもしれませんが、なぜ女性トイレにはいつも列ができているのか疑問に感じていました。トイレで待つことを念頭に置き、時間に間に合うよう行動しなければならない理不尽さが解消されてほしいと思います。
トイレは誰もが日常的に利用するものです。状況によって男女間に違いが生じることは仕方のないことだと思います。しかし、女性はより時間がかかることなどを考慮し、面積や個室の増設など設計段階での見直しも必要だと感じます。さまざまな分野で男女平等が謳われる中、トイレの平等も問題として提起されてきました。列に並ぶことは仕方のないことだと受け入れてきましたが、身近な問題の一つとして今後の変化に注目していきたいものです。
参考資料
朝日新聞デジタル「なぜ女性トイレだけ行列? 706カ所調べてみたら・・・見えた男女格差」https://digital.asahi.com/articles/AST1X0FS7T1XULLI00ZM.html?iref=pc_ss_date_article
読売新聞オンライン「水に流せない! “女子トイレの行列”問題」https://www.yomiuri.co.jp/fukayomi/20180411-OYT8T50003/