増加するオーバードーズ。規制の現状と未来

大量の錠剤の画像と絵文字のピース。SNSをみている最中に突然流れてきたツイートに大きな衝撃をうけたことがあります。

「オーバードーズ」という言葉を知っていますか。厚生労働省によると、医薬品などを決められた量を超えてたくさん飲んでしまう過剰摂取行為のこと。例えば、かぜの症状を抑える目的ではなく、気分や感覚に変化をもたらすために、1度に大量の薬を服用してしまうような行動です。

オーバードーズは10代、20代の若い世代を中心に近年増加傾向にあり、社会問題のひとつとしても取り上げられています。現象の背景には、いじめや虐待、家庭問題などが指摘される場合もあります。

筆者にも、オーバードーズで身内を失った知り合いがいます。「兆候もなにもなく突然のできごとで、本当に起きたことだったのか今でも信じられない」。このように語る知人に、筆者も言葉を上手くかけることができませんでした。

現時点でのオーバードーズ対策は、エフェドリンなど6つの成分を含む薬を「乱用の恐れがある医薬品」に規定し、これらを「若者」に売る場合には氏名や年齢、購入状況や理由の確認、また原則1人1個とする販売制限をかけるといったものです。

ですが購入店舗を複数にわけて入手する抜け道や、親や中年層を利用した代理購入が考えられます。また、規定された医薬品以外でも種類によってはオーバードーズに用いられる可能性を考えると効果的な対策とはいえないように感じます。

2025年にはオーバードーズの新規制法案を取り入れた「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)」の改正が検討されています。

現時点ではおもに、従来の乱用のおそれのある医薬品の1人1個の販売制限、購入時の氏名、年齢、購入理由の確認ルールの徹底のほかに、「20歳未満には小容量1個のみ販売」「『乱用のおそれのある医薬品」の販売は、対面か映像と音声よるリアルタイムのオンラインによる販売」といった規制案が検討されているそうです。

記事を読んでいると、近年使用例が増えている、咳止め薬『デキストロメトルファン』が「乱用のおそれのある医薬品」に入っていない点や、店頭販売での規制が緩やかな点を疑問視する声がみられました。

筆者もSNSなどをみていると、どちらかというとオーバードーズの行為者は気分や気持ちが高揚する薬であれば、薬の成分や種類は問わない人が多いように感じます。

SNSは想像以上に情報交換などがさかんなため、当面こそ規制の効果で乱用を減らすことができるかもしれませんですが、新たな薬を試す人数が多くなればなるほど、「乱用のおそれのある医薬品」の種類の迅速な更新は必要不可欠になってくるのではないでしょうか。

また20歳未満の若年層では、スマホを親が管理している場合も考えられます。ネット購入だと履歴から親にバレるかもしれない、だから実店舗で購入しよう。そう考える若者は少なくないと思います。

周囲が気に掛けることももちろん大切ですが、購入履歴を記録として残せるデジタル手法の導入など、購入前に少しでもリスクを減らせる具体策を講じてほしいと願います。

参考記事:
11日付朝日新聞朝刊25面「依存性高い成分含む市販薬、規制強化へ」
14日付日本経済新聞2面「市販薬の乱用防止対策はピント外れだ(社説)」

参考資料:
・読売新聞オンライン「乱用の恐れがある市販薬、購入者の手が届かない場所に陳列…オーバードーズ対策で厚労省が販売方法見直し案」2024年11月12日https://www.yomiuri.co.jp/medical/20241111-OYT1T50227/
最終閲覧日:2025年1月15日

・保健医療局「市販薬のオーバードーズ(過剰摂取)について」2024年12月17日
https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/anzen/kenkou_anzen/stop/kiso/overdose
最終閲覧日:2025年1月15日

・厚生労働省「一般用医薬品の乱用(オーバードーズ)について」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/index_00010.html
最終閲覧日:2025年1月15日