昨日は「笹の節句」とも呼ばれる七夕でしたね。「小暑」である7月7日を境に暑さが徐々に強まっていくといわれています。筆者の暮らす京都では、祇園祭のお囃子の音があちこちで流れ始めています。
筆者が高校を中退することを決めたのは、祇園囃子の鳴り響く、ちょうどこの時期でした。中退後、高校卒業程度認定試験、昔でいう大学検定のようなものを受験し、大学の受験資格を手に入れました。しかし、この試験に合格しても、「高卒」という学歴を得ることはできません。ただ、「高校卒業と同程度の学力を有する」ことが証明できるだけで、最終学歴は「中卒」のままです。「高卒」という肩書きを得るためには、他の高校に入り直す必要があります。
しかし、あえて高校を中退した人が、「普通の」高校に入り直してうまくやっていけるとはあまり考えられません。私自身は通いませんでしたが、一般の高校とは単位取得方式が異なる、通信制高校に入り直すことが多くなります。通信制高校は、何らかの事情があって普通制高校の在学が続けられなかった生徒のためのセーフティ・ネットなのです。
この通信制高校の一つ「クラーク記念国際高校」が不正編入をしていたとして、北海道から改善を指導されました。編入学できるのは学校教育法で認可された高校で学んだ生徒だけなのに、認可を受けていない「四谷インターナショナルスクール」の生徒を編入させ、単位まで認定していたというのです。クラーク側は、このスクールが編入学のできない施設だと認識していなかった、と釈明しています。文科省の認可を受けた高等学校として、この態度はいかがなものかと思います。
問題はそれだけではありません。同スクールの教職員が生徒の代わりに授業を受ける、試験を欠席した生徒の代わりに教職員が受験する、などの不適切な行為が行われていたというのです。
この背景には、通信制高校の間での競争が激しくなっていることがあるようです。近年、通信制高校は大幅に増えています。一方、通信制高校の生徒数の伸びは芳しくなく、高校中退者数は減少傾向にあります。供給のみ増え続け、需要が停滞している今、通信制高・サポート校は生徒確保に全力を尽くしています。留学支援や体験活動を充実させたり、進学率を上げたりと、そのやり方は様々です。そうした中で、クラークも四谷も、生徒の心を離れさせまいと「ご機嫌取り」の行動をとってしまったのでしょう。
とはいえ、いくら背景を理解したとしても許しがたい行為ではあります。認可を受け、お墨付きを得た学校を卒業するから、「高卒」に社会的な信用が置かれているわけです。まして、クラークは全国に展開しています。そうした規模の高校のなかでの極端な事例とはいえ、「卒業」のための単位認定が不適切に行われていたとなると、他の通信制高校への不信感も生まれ、ひいては通信制の卒業生に対する信頼も揺らぎかねません。
もう一つ指摘したいことがあります。通信制でも、認可を受けていなくても、「教育施設」であることには変わりはないはずです。教職員が授業や試験を受けていて、どうやって生徒の学力が向上するというのでしょうか。
私自身、アルバイトという身ですが通信制高校生の指導に携わっています。問題となった学校はもとより、他の関係者ももう一度自らの施設の意義や、自らの教育態度を見つめ直し、改善することを切に願います。
参考:
8日付 読売新聞朝刊(14版) 社会面 「不正編入 通信制高に改善指導」
同日付 朝日新聞朝刊(14版) 社会面 「北海道の通信制高 生徒を違法編入学」
文部科学省HP 「定時制課程・通信制課程高等学校の現状」 「学校基本調査 年次統計」