栃木県宇都宮市にLRT(次世代型路面電車システム)という交通軌道システムを活用した路面電車が走っています。全国で路面電車が少なくなっていくなか、宇都宮市と隣の芳賀町を結ぶ新しい路面電車は23年8月に開業しました。路面電車の開業は国内では75年ぶりとのことです。まもなく開業1周年を迎える宇都宮ライトレールに始発から終点まで乗ってみました。
宇都宮ライトレールは宇都宮駅東口を出発し宇都宮大学、グリーンスタジアムを経由して芳賀・高根沢工業団地まで運行しています。筆者は今月、始発駅から終点まで乗車してみました。
宇都宮駅周辺のビルを横目に車両はゆっくり動き出します。しばらくすると辺りには建物がなくなり田園風景が広がります。そして鬼怒川を渡り、終点の工業団地に到着します。運賃は終点までで400円、乗車時間は約40分です。筆者は日曜日の始発に乗車したためか乗客は8人くらいでした。音も静かで振動もなく、とても快適に移動することができました。
宇都宮ライトレールの車体は雷を連想させる黄色と黒で塗られています。宇都宮市と芳賀町一帯は雷が多い地域として知られています。雷や雷を受けて豊かに実る稲をイメージさせる黄色、そして全体が引き立つように背景色にダークグレーが用いられています。また車両だけでなく停留所や案内板、制服などのいたるところに黄色と黒のメインカラーが見受けられ統一感を感じます。
宇都宮ライトレールの運賃精算は現金か交通系ICカードで行います。PASMOや宇都宮を中心に使用されるICカードtotraが使えます。現金で精算をする際は停留場で整理券を取ってから乗車し、降車時にお金を払います。まるで電車とバスが融合した乗り物のようです。
宇都宮ライトレールはNCC(ネットワーク型コンパクトシティ)を考慮して計画されました。NCCとは人口減少や少子高齢社会に対応できるよう、地域の拠点に機能を集中させることをいいます。鉄道やLRT、バス、地域内交通を組み合わせることによって公共交通ネットワークができ、拠点と周辺地域の間に新たな人の流れを作り出します。経済活動が活性化することで持続可能な都市に生まれ変わることが期待されています。
地域の拠点である宇都宮ライトレールの停留所はトランジットセンターと呼びます。トランジットセンターは全部で19か所ある停留所のうち宇都宮駅東口、宇都宮大学陽東キャンパス、平石、清原地区市民センター前、芳賀町工業団地管理センター前の5か所がです。
路線はこれから宇都宮駅西口側にも延伸する予定です。市は延伸の予算案に、5億1千万円を盛り込んでいます。延伸反対の市民団体の代表は「大通りの車線をLRTの軌道や停留場が占拠し、道路交通や公共交通が破綻する。バスの街にLRTは必要ない」と抗議します。宇都宮ライトレールをめぐる政治的対立はまだまだ終わりません。これからの交通システムを巡る動きに注目していきます。
参考資料:
芳賀・宇都宮LRT公式ホームページ
(https://u-movenext.net/about/)
参考記事:
25日付 日本経済新聞 「宇都宮LRT、議会に決算・予算報告 今期収入11億円予想」(https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC254QZ0V20C24A6000000/)
3日付 朝日新聞デジタル 「ロボットがLRTに乗り込み荷物運搬 宇都宮大が実験」
(https://www.asahi.com/articles/ASS613GD3S61UUHB003M.html)
25日付 下野新聞SOON 「2024年度運賃収入の見通しなど公表 宇都宮ライトレール 開業年度実績比1.3倍見込み」