月日が経つのは早いもので、気がつけばもう6月。本格的な夏が目前に迫ってきました。
北海道在住の筆者としては、サマーインターンシップが開かれる夏休みに、スーツ姿で酷暑の本州に赴かなければならないのかと戦々恐々としています。
6月は就職活動の節目となる時期で、1日には25年春に卒業する大学生・大学院生を対象とした採用選考が解禁されました。
ただ、すでに多くの学生が内定を得ており、解禁日はもはや実態を示しているとは言えません。
優秀な人材確保のため年々選考の早期化が進むなど、就活は大きく変化しつつあります。
今回は、3つのキーワードから就活の変化を読み解きます。
◯早期化
25年卒の学生の場合、政府が定めたルールでは、3月1日に広報解禁、6月1日に採用選考解禁とするよう要請されています。しかし、実際には大半の学生が6月以前に内定を得ているとの調査もあり、ルールはほとんど形骸化していると言えます。
早期化による学業への悪影響が懸念されています。
現在のスケジュールでは、学部3年(修士課程の場合1年)の6月前後から夏のインターンシップに向けて就活が本格化します。大学によってはゼミや研究室に配属され、専門的な研究が始まる時期にも当たります。その結果、就活と学業の両立を強いられることになります。
特に院生の場合、大学院への入学前に就活を始める学生もいるほどです。筆者の周囲でも大学卒業前の2〜3月頃から就活を始めたという声をよく耳にします。
◯双方向
企業から学生へのアプローチは盛んに行われています。
従来、就活サイトといえば「マイナビ」や「リクナビ」といったナビサイト型のものが主流でした。学生は膨大な数の企業の中から志望する会社を探し、インターンや選考に応募します。
現在も多くの学生が利用していますが、近年は「OfferBox」や「キミスカ」などの逆求人(オファー)型サイトの利用が盛んになるなど、多様なサービスが登場しています。
一般に逆求人型サイトでは、学生が自己PRやガクチカ(学生時代に力を入れたこと)などのプロフィールを登録し、その内容に魅力を感じた企業からスカウトが届きます。
学生側は、これまで知らなかった企業や興味のなかった業界の魅力を発見できます。一方の企業側は、優秀な学生に直接アプローチできるという、双方にメリットがあります。
企業と学生の出会いの場は多様になっています。
◯ジョブ型
日本型雇用慣行の特徴とされる「メンバーシップ型雇用」の見直しも進んでいます。
これまで企業は、新卒者を職務内容や勤務地を指定しない「総合職」として一括採用し、頻繁に行われる配転を通じてゼネラリストを育成してきました。
ただ、「配属ガチャ」という言葉の流行に見られるように、配転への忌避感は強く、勤務地を限定した「エリア総合職」や、職種をある程度絞った「コース別採用」も導入されています。
例えば、三井住友銀行の新卒者向けの募集要項には、従来型の総合職の他に、「グループリテール」、「IT・デジタル」など8つのコースが設けられています。
ファーストキャリアを自分で選ぶとなれば、学生にはこれまで以上に自身の将来目標に真摯に向き合う姿勢が求められます。
早期化・双方向・ジョブ型の3つのキーワードで読み解く就職活動。
学生には変化への適応が、企業には学生への配慮が欠かせません。
参考記事:
6月4日付 朝日新聞朝刊6面(経済・総合)「こっちの企業「ガチャ」ないぞ 志向に合わせ、配属先や勤務地「確約」」
日経電子版「就職内定率、過去最高の85% 企業は配属確約で青田買い」(2024年6月7日)
日経電子版「採用選考解禁!なのに4割就活終了 ルール横目に前倒し」(2024年6月1日)
日経電子版「新卒の採用選考1日に解禁 進む早期化、内定率8割に迫る」(2024年6月1日)
日経電子版「Nikkei Views 早く長い就活、かすむ学業 求める人材明示が打開のカギ」(2024年5月15日)
参考資料:
内閣官房|2025年(令和7)年度卒業・修了予定者等の就職・採用活動に関する要請
参考文献:
水町勇一郎『労働法〔第10版〕』(有斐閣、2024年)