筆者は20番目までしか言えません。「スイ、ヘ、リーベ・・・」。元素の周期表のことです。みなさんはどこまで覚えているでしょうか。
原子番号113番の元素について、科学者の国際組織「国際純正・応用化学連合(IUPAC)」が理化学研究所の森田浩介教授のチームを発見者と認定し、命名権を与えたのは昨年12月31日のことでした。あらたにすでも明るいニュースとして取り上げました。
それから6ヶ月、ついに新元素の名称案が公表されました。その名も「ニホニウム(Nh)」です。日本らしく、なんとも親しみやすい名前です。命名にあたっては、元素の性質や鉱物、神話、天体、地名、科学者の名前にちなんだものという決まりがあります。また、過去に取り消された名称は使えません。
実は100年ほど前にも日本由来の元素が存在しました。「ニッポニウム(Np)」です。東北帝国大学長など歴任した小川正孝博士が、当時未発見だった43番元素に命名しました。ところが、43番元素は別のものであることが分かり、周期表からNpの文字は消えてしまいました。
今回の命名は100年来の日本の悲願達成ですが、その道のりは簡単ではありませんでした。2003年に始まった実験で成功したのは3回。その間に東日本大震災が起き、大量の電気を要する実験の継続が危ぶまれた時期がありました。森田教授は「応援してくださった日本の皆さんのことを思った」「税金で続けられている研究。感謝をこめて日本にちなんだ名前を考えた」と語りました。そして今後は「まったく未知のフロンティアを見つけたい」と抱負を述べました。
こんな風に思ってくれているのであれば、もっと応援したくなります。遠からず教科書の周期表に書き加えられます。人々は113番目のNhを決して忘れることはないでしょう。
参考記事
9日付 朝日新聞 13版 1面 『日本発見「ニホニウム」周期表に』
同日付 日本経済新聞 13版 42面 『母国語で国名 自然』
同日付 読売新聞 13版 35面 『100年越し「日本」名』
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