近年、人気が高まっているのがクラフトビール。小規模の醸造設備で生産される、いわば工芸品のようなビールのことです。大量生産品と異なり、作り手それぞれの味わいや香り、色が楽しめることで注目されています。黒・赤・白・琥珀色・赤銅色・黄金色…。麦芽やホップの量や質、醸造法の違いによって、甘みや苦味、強さ、口当たりなどが全く違ってきます。個性豊かな味わいと多様性が魅力の一つです。
嗜好品だけに、新しい味わいを定着させるのは容易なことではありません。市場を広げたいのなら、メーカー各社は様々なクラフトビールに挑戦すべきでしょう。実際に、2015年から大手のビール会社はクラフトに参入し、新たな顧客の開拓を始めています。
今朝の朝刊に興味深い取り組みが紹介されていました。複数の酒造会社が連携するというものです。2015年に酒類卸会社のコンタツ(東京・中央)と石川酒造(東京都福生市)が始めたクラフトビールづくりに、黄桜(京都市)と小西酒造(兵庫県伊丹市)が加わります。老舗の酒造会社が持つ技術力や生産能力を生かし、それぞれのクラフトビールを地域の定番商品に育てようというのです。
原料や製法にこだわるクラフトビールは主に中小のメーカーが製造・販売してきました。製造量が少ないために「地産地消」の意味合いが強く、「地ビール」とも呼ばれます。
複数の酒造会社が連携することで、今までその土地でしか味わえない喉越しを、遠く離れた愛飲家も楽しめます。長期低迷が続くビール市場の起爆剤になることを期待しましょう。
国内には200以上のクラフトビール醸造所(ブルワリー)があるといわれています。レストランで飲んだその一杯をきっかけに、見学ツアーに参加するのはいかがでしょうか。温泉や観光地に近い施設が多いので、旅行の途中に立ち寄るのもおすすめです。醸造元が自ら仕込みや発酵といった工程を説明してくれます。
私はお酒が弱いのでそれほど飲めません。しかし、作り手のこだわりを聞くと両親へのお土産にビールを買いたくなります。今回の取り組みが、新たな地域おこしにつながればと嬉しいですね。
参考記事:5日付 日本経済新聞 「東京・京都・大阪 三都の地ビール飲んで」7面(企業)(東京13版)