30万7,930件。この膨大な数字は、昨年の交通事故発生件数です。毎日、数百件もの事故が起きているということです。歩行者として、あるいは、自動車や自転車の運転者として、誰もが交通事故に遭遇する危険性があるのです。
心を痛める交通事故は後を絶ちません。「ブレーキとアクセルを踏み間違えた」。高齢ドライバーによる事故で最も多い原因が運転操作の誤りです。
(死亡事故における人的要因比較 内閣府ホームページより引用)
高齢ドライバーによる運転を危険視する声が上がるのは当然でしょう。しかし、高齢化に伴いハンドルを握るお年寄りが増加しているというのが現状です。高齢運転=危険運転、そのように捉えてしまう人も多いのではないでしょうか。私も以前はそのように思っていました。
先日、祖父との会話のなかで車の運転の話になりました。「免許を返納する人も増えているが、何歳になったら運転をやめると決めてしまうことはしたくない」と言います。年齢を理由に何かを辞めていくことに疑問を感じると話していました。危険な場合は当然免許を返納すべきだが、支障をきたさない範囲で運転を続けてもいいのではないか。運転をすることが元気で過ごすことの目標になると祖父は言います。
この言葉にはっとさせられました。高齢ドライバーは事故を起こしやすいから免許を返納するべき。この考えも一理あります。ですが、大切なことは高齢ドライバーの意思と周囲の人の判断をどのように折り合いを付けていくかなのではないでしょうか。
22日付日本経済新聞によると、日本老年学会理事長の荒井秀典氏は高齢者の運転技能は多様であると言います。荒井氏は、「社会全体で多面的な取り組みを推進する必要がある」と強調していました。求められるのは認知機能や身体機能の衰えを定期的に把握することでしょう。
運転を継続するか否かは、高齢ドライバーの心身の健康にも繋がる重要な選択です。運転を中止した高齢者は、継続している人と比べて要介護状態になるリスクが高まるそうです。そのため、運転継続が難しい場合は、行政や地域からの支援のもと何らかの代替手段を検討すべきだという指摘があります。高齢ドライバーが納得した上で、安全な選択ができる仕組みが確立されることを期待したいものです。
自分自身が交通事故の加害者、被害者にならない保証はどこにもありません。高齢ドライバーに注文を付けるのなら、私たち自身は一層、交通安全を心がけることが求められます。
参考記事:
21日付 読売新聞朝刊(大阪14版)24面(社会)「癒えぬ心それでも歩む 遺族 妻子失った現場初めて横断」
22日付 日本経済新聞朝刊(東京12版)31面(社会)「高齢ドライバーの運転 中止前に「代替手段検討を」 日本老年学会が提言」
参考資料:
内閣府 「「高齢者に係る交通事故防止」I 高齢者を取りまく現状」