格差広がるカナダ 大麻使用合法化から約6年経った今

カナダのバンクーバーに来て3週間が経ちました。筆者はワーキングホリデービザで留学をしています。現在は語学学校に在籍し、電車でダウンタウンと呼ばれる中心地域に通っています。

今月8日、米国とメキシコに加え、カナダ南東部でも太陽が月に完全に隠される「皆既日食」が観測されました。カナダでは45年ぶりです。バンクーバーは生憎の雨に加え部分日食だったこともあり、それほど大きな盛り上がりは見られませんでしたが、書店などでは皆既日食を見るためのサングラスが3.5カナダドル(390円)で販売されていました。

カナダに来て、日本とは異なる多くの異文化に出会いました。良いと思うこともあれば日本の良さに気付かされる体験もありました。その一つとして「大麻の合法化」が挙げられます。

カナダでは医療目的での大麻使用が2001年に認められ、その後18年には娯楽目的での使用まで合法化されました。大麻使用を国家として合法化するのは南米ウルグアイに続き2カ国目で、G7では初めてでした。日本でも昨年12月に大麻取締法などの改正案が成立し、遠からず医療目的での大麻使用が可能になる見通しです。

では、なぜカナダのトルドー首相は大麻使用の合法化に踏み切ったのでしょうか。2つの目的があります。まず若者の薬物依存を解消するためです。18歳以上の成人の使用を合法化する一方で未成年の譲渡を厳しく規制し、若い時からの使用を無くそうという狙いです。次に政府が大麻の流通を管理することで密売を減らし、税収を上げることも目指しています。18年の合法化を機に、1人が所持できる大麻の量は最大30グラムとなりました。

娯楽目的でも大麻使用を合法化して良かったのでしょうか。実際にカナダで暮らし始めた視点から考えます。筆者は合法化が薬物所持を軽減することにつながっていないと思います。そして合法化については反対です。

駅から学校に向かう道のりで少なくとも10人ほど、大麻を実際に使用している人、使っていると思われる人を見かけます。また、街は大麻の香りが漂っています。すでに1ヶ月ほどカナダで生活している韓国人の友人は「タバコの香りが可愛く感じてきた」と話していました。それほどに大麻は強烈な匂いを発しています。

大麻を常時吸っている人には特徴があります。まず、歩き方が健常者と大きく異なります。筆者が見る限り、ほとんどの人が体を屈んだままヨロヨロと拙い足取りで歩いています。また、ある人はタイルとタイルの隙間にある溝に飲み物を注ぐような、健常者ならするはずのない行動をしていました。

筆者は6年ぶりにカナダへ来たのでしたが、ダウンタウンがこんなにも汚れてしまっていることにとても失望しました。大麻使用の合法化が人々の生活を大きく二分し、格差を広げてしまっているように感じます。大麻に溺れてしまった人。それを見て見ぬふりをする人。

大麻使用を合法化したことで国の治安は悪化しています。そのうえ大麻の利用が削減できているとは思いません。それならば、逆に刑罰化したうえで厳しく取り締まる方が、国のためにも国民のためにも好ましいのではないでしょうか。

 

参考記事:

・9日付、読売新聞オンライン、「全米が沸いた「皆既日食」、太陽がすっぽり覆われると大歓声…交通渋滞や宿泊代高騰も」

・6日付、朝日新聞デジタル、「北米縦断、皆既日食フィーバー 大勢が移動、混乱懸念 8日、広範囲で観察可能に」

・2023年12月6日付、朝日新聞デジタル、「海外では合法化も 大麻の使用罪新設へ 専門家「罰則より支援を」」

・2023年12月5日付、朝日新聞デジタル、「大麻草由来の薬解禁 改正案成立へ てんかんなど治療 使用罪を創設」

・2019年6月17日付、朝日新聞GLOBE+、「大麻は取り締まるより合法化 カナダの壮大な社会実験、「選択と集中」の結果だ」

・2018年10月17日付、日本経済新聞、「カナダが大麻解禁 G7初、密売防止狙う」

・2018年6月20日付、BBC NEWS JAPAN、「カナダ、娯楽目的の大麻使用を合法化へ」