「聖地」増加で地域が元気に!?「光る君へ」から考える「ロケツーリズム」

「源氏物語」の作者・紫式部の生涯を描くNHK大河ドラマ「光る君へ」の放送が今月7日からスタートしました。今後の京都は同ドラマのロケ地や所縁の地として、「聖地巡礼」や「ロケツーリズム」が流行するかもしれません。

蘆山寺・京都市中京区(筆者撮影:2024年1月27日)

蘆山寺・京都市中京区(筆者撮影:2024年1月27日)

先日、紫式部の邸宅跡、蘆山寺を尋ねました。中に入ると、枯山水の庭園「源氏庭」が出迎えてくれます。1965年、考古学者の角田文衛博士の考証で、紫式部が源氏物語などを執筆した邸宅跡だと判明し、それを機に整備されたといいます。白砂の美しい庭園を眺めながら、平安時代に思いを馳せてみるのも良いかもしれません。

蘆山寺内の「源氏庭」・京都市中京区(筆者撮影:2024年1月27日)

ドラマや映画によって地域の新たな魅力が発信されれば、ファンが所縁の地を訪ねる「聖地巡礼」や「ロケツーリズム」による往来が生まれ、地域経済の活性化に繋がるかもしれません。観光客が多い京都の場合、新たな名所が周知されることで混雑の分散に繋がることも期待できます。

実際に、メディア露出による地域経済への波及効果は大きいようです。長崎県島原市は2021年、市役所のシティプロモーション課の中に「ロケツーリズム班」を立ち上げました。市内にある島原鉄道の大三東駅は2021年、清涼飲料「キリンレモン」のCMに使われました。「日本一海に近い駅」としてホームが海上に浮かんだような風景が人気を博しています。

海や山、城下町などを活用した島原市内での作品撮影は2022年度に3年前の4倍ほど、32件まで急増しました。同時期に移住者増加という副次的な影響もあったそうです。

福岡県北九州市は「映画の街」として、業界からの信頼が厚いそうです。ロケの誘致活動を開始してからの35年間に支援した国内外の映画やドラマなどの作品は700件超。ロケに伴う経済効果は近年の7年間だけでも21億円に上ります。

企業も映像作品の公開に伴う知名度の上昇に合わせ、観光促進に通り組んでいます。

蘆山寺内の紫式部像・京都市中京区(筆者撮影:2024年1月27日)

「光る君へ」の放送に合わせて今月23日から、「源氏物語」を書いた紫式部と所縁のある大津市をPRするラッピング列車「びわこおおつ 紫式部とれいん」がJR西日本管内の米原(滋賀県米原市)~上郡(兵庫県上郡町)間で運行が始まりました。

また、JR西日本と京阪電鉄は、今月29日の「光る君へ びわ湖大津 大河ドラマ館」オープンにあわせて、バス・電車の乗車券と大河ドラマ館・石山寺の入場券がセットになった「紫式部 大津周遊チケット」を販売します。自治体や企業が長期的に連携することで、観光地として流行で終わらず定番化に繋がるかもしれません。

全国各地で映像作品のロケ誘致や、それに伴った観光促進などの動きが強まっています。映像作品は私たちに新たな地域との出会いをもたらす観光の起爆剤としての可能性を秘めていることがわかります。

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