近年、子どもの自殺が増え続けています。「心の苦痛」を感じる子どもは少なくありません。この現状を打開しようと、政府は省庁横断のデータ分析に乗り出しました。
現在、子どもの自殺に関する資料や統計データは各省庁に分散しており、自殺予防に十分活用されていないものもあります。それらを子ども家庭庁に集約し、個々のケースを分析しながら自殺に至る要因を多角的に調べ、科学的根拠に基づく予防策の提言に繋げていきます。
■子どもの自殺に関する日本の現状
2013年から22年の直近10年間に、計3930人の小中高生が自殺しました。過去最多は直近の22年。514人にも上りました。
以下は、厚生労働省「死因順位(第5位まで)別にみた年齢階級・性別死亡数・死亡率(人口10万対)・構成割合」の抜粋です。
20代以下の主な死因が自殺であることがわかります。これは世界と比較しても多く、先進7か国(G7)のうち日本だけ10代の死因第1位が自殺でした。
■子どもの自殺に関するデータ
子どもの自殺に関する資料や統計データは、警察庁や厚生労働省、文部科学省、総務省、消防庁、各自治体に分散しています。従来は、警察庁と厚生労働省が公表する「自殺統計」が政策立案などでの主要データとなっており、自殺対策にも活用されてきました。一方、学校などが把握する情報と一体化した分析はできておらず、自殺に追い詰められた背景、プロセスの解明が不十分との指摘も出ていました。より詳しい実態解明につなげるため、データを重ね合わせて分析し、心理的に追い詰められていった背景、きっかけから予防策を打ち出すことを目指します。
■今後の課題
各省庁のデータ様式は統一されていないため、分析作業を進めるところから始まります。初めての試みであり、困難を極めるでしょう。また、プライバシーへの配慮も欠かせません。自殺した子どもやその家族、周囲の人に関する情報を扱うには十分な注意が必要です。
筆者は最近、児童虐待や教育に関する問題に関心を抱いています。関連図書や論文を読んで思うのは「子どものころに感じた心の苦痛は、大人になっても残り続けることが多い」ということです。生きづらさを感じる人をなくすためには、子どもの時からの適切な対応が欠かせません。自殺を防ぐための措置は、その前段階である心の苦痛を減らすことにも有効なのではないでしょうか。そして予防のためには、現状の把握・分析が欠かせません。未来の子どもや、未来の社会のために、まずは現実をしっかりと見つめる必要があります。
参考記事:
・2023年12月27日付 朝日新聞(東京)朝刊 1面 「子ども自殺対策、データ集約 省庁点在の資料、こども家庭庁が分析へ」
参考資料
・厚生労働省HP 死因順位(第5位まで)別にみた年齢階級・性別死亡数・死亡率(人口10万対)・構成割合 (mhlw.go.jp)