「11時間休んでから出社すること」

 今年のゴールデンウィークも、仕事や学校が心配になってくる時期に入りました。そこで今回は、気になる労働時間の話題です。「少なくとも11時間休んでから出社すること」。そんな規則ができるかもしれません。

 厚生労働省は、「従業員がオフィスを退社してから翌日に出社するまで、一定時間を空ける制度」を導入した会社に助成金を出す方針を固めました。就業規則に明記すれば、企業は最大で100万円の助成を受けることができます。具体的には、中小企業を対象にした「職場意識改善助成金」の1つです。支給されたお金で労務管理用のソフトを導入するなど、更なる業務改善が期待されています。

 実は、勤務に一定の時間を空けるという試みは、急に出てきた話ではありません。EUでは、すでに90年代から義務化されていました。出社から退社まで11時間を確保しなくてはならず、週48時間以上働かせてはいけないと法律で決まっています。また日本でも、大手企業の一部は自主的に採用しています。

 今回、日本で公式に導入が決まったのは、安倍政権の掲げる「一億総活躍社会」の大きな流れだと思われます。3月25日に行われた「一億総活躍国民会議」での首相の発言を読んでみますと、第一に長時間労働の是正を挙げています。長い労働時間に対して日本でも疑いが生まれ始めたので、それを政府が後押しをする。そんな構図が見えてきます。

 さて、今日の紙面を見ていて驚いたのは、「現状ではそうした(企業が退社から出社までどれくらい間隔をとっているかについての)統計がない」という一文でした。労働時間については散々調査していると思っていたのに、本当に数字はないのでしょうか?そこで、厚生労働省の統計を少し読んでみました。確かに「どれだけ休息をとっているか」を示す数字は見つかりません。

 ただ、今後の難しさを思わせるのは、業種ごとに働き方が大きく異なるということです。「産業別月間労働時間」を見てみますと、「宿泊業、飲食サービス業」が毎月110時間程度なのに対し、「医療、福祉」では140時間程度。「運輸、郵便」に関しては170時間を超える年もありました。業種が違うので働き方に差が出るのは当然ですが、助成金が適切に届くよう、バランス感覚を持って進める必要があります。

 制度が導入されるのは、早くて2017年の春からということ。ゴールデンウィークの長さには関係ない話題ですが、休み明けの憂鬱が、今年より少しだけ和らいでいるかもしれません。

参考記事:5月4日付 日本経済新聞朝刊1面 『勤務 一定の間隔確保』

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