厚生労働省が「健康づくりのための身体労働・運動ガイド」案を10年ぶりにまとめました。「成人は1日60分以上の歩行」。私は読売の記事の1行目を読んだとき、率直に言って無理があると思いました。厚労省ガイド案によれば、成人の身体活動(生活活動・運動・座位行動)の主な推奨事項は以下のようになります。
- 強度が3メッツ以上の身体活動を週23メッツ・時以上行うことを推奨する。具体的には、歩行またはそれと同等以上の強度の身体活動を1日60分以上行うことを推奨する(1日約8000歩以上に相当)。
- 強度が3メッツ以上の運動を週4メッツ・時以上行うことを推奨する。具体的には、息が弾み汗をかく程度の運動を週60分以上行うことを推奨する;筋力トレーニングを週2〜3日行うことを推奨する
※メッツ:身体活動の強度を表し、安静座位時を1メッツとし、その何倍のエネルギーを消費するかという指標
(参考:厚労省「健康づくりのための身体活動基準・指針の改訂に関する検討会」)
私は目安で求められている運動量が予想より多くて驚きました。ここで、私の1カ月の歩行記録を見ていただきましょう。通学時に1駅前で降りて歩いたりするなど、日頃からちょっとした歩行を心がけてはいます。しかし、それでも8000歩に達したのは2日しかないのです。ここから分かるのは、暇な大学生でも基準を満たすのは難しいのだから、社会人が健康な体を維持するにはよほど意識して運動する必要があるということです。
厚労省のガイド案には「推奨事項(中略)は一般の方にとって理解しにくい可能性があるため、概ねこの推奨事項に相当する『1日60分以上の身体活動』『1日8000歩以上』を推奨しましょう」とあります。しかし、忙しい社会人にとって60分を確保するのは至難のわざ。ここで鍵となるのはむしろ、家事・労働・通勤・通学といった日常生活の中で、いかにエネルギーを消費するかでしょう。3メッツ以上の生活活動は、たとえば掃除機、風呂掃除、庭の草むしり、荷物を上の階へ運ぶなどが挙げられます。反対に3メッツ未満では、ゆっくりとした歩行や洗濯、ピアノの演奏があります。確かにその境界は分かりにくいですが、座りっぱなしを避け、なるべく体の動きを伴う活動を試みるのがいいのでしょう。
高校までのように体育の授業があるころはよかった。私たちはもはや自分の健康は自分で維持しなければなりません。意識して実践することは意外と難しいもの。しかし、適度な運動は心の病気のリスクも下げるといいます。若者のオーバードーズやうつ病が社会問題と化しているいま、運動という観点からもできることが何かあるかもしれません。
参考記事:
19日付 朝日新聞朝刊(14版)25面「歩行『1日60分以上』筋トレ『週2〜3回』」