AI規制で技術を守れる社会に

「#同じ人が描いたと思えない絵を貼る」

先日、こんなハッシュタグをX(旧Twitter)で見ました。1枚目は、ノートに鉛筆で描いた落書きのようなイラスト。しかし、4枚目には「写真ではないのか」と思わず疑いたくなるような美しい風景が描かれていました。

「10年を振り返ってみた」。この言葉とともに貼られていた画像はたったの4枚。ですが、その4枚の裏には何千何百という絵を見た気がしました。

「日本新聞協会、著作権法の早急な改正を要望…AI無断学習容認で偽情報拡散の危険性も」

11月8日の読売新聞オンラインにはこのような記事がでていました。AIの著作権に関わる問題は新聞に限らず、以前から発生しているように感じます。

「画像生成AIの無断学習によって、これまでの手描きの絵師の創作発表の意欲が著しく損なわれた」

半年ほど前。絵を生業とする方の悲痛な声がX上で見られ、応援している1ファンとして、とても切ない気持ちになったことを今でも覚えています。

業務の効率化などAIを導入することによるメリットもみられます。しかし、これまで専業として培ってきた方々のスキルをAIが自由に学べることは、果たして適切といえるのでしょうか。

現行の著作権法は、2018年の改正で、著作権者つまり作成者の許諾がなくとも著作物をAIの学習に利用できるとする「30条の4項」の規定が設けられました。「著作権者の利益を不当に害する」場合は利用できないとしていますが、該当例は明示されていません。

一方で、欧州は23年6月にAIのリスクを4段階にわけ、禁止や市場投入前の評価などの措置をとる規制案を採択。AIで画像などを生成した場合は「AI製」と明示し、透明性も高めるという規定を設けました。規制の完全適用についても26年ごろまでを検討しているといいます。

また、米国では同年10月にバイデン大統領がAIの安全性を確保するための大統領令を出しており、サービス提供や利用開始の前に、政府による評価を受けるよう開発企業に義務づけました。

このように、他国と比較すると、日本の取り組みが一歩遅れていることが伺えます。

5秒という時間で10年という月日と同等の価値を示せるのは、AIだからこそできるひとつの魅力でしょう。ですが、裏を返せば、その月日を費やすほど、人は物事と向き合い、鍛錬することができます。

分野によっては、AIが先導していく上でも学習は必須になるかもしれません。ですが、培ってきた技術を保護するための著作権法改正や、AIによる学習を拒否できる仕組みも必要であり、一刻も早く整えるべきだと思います。

 

参考資料:

読売新聞オンライン「日本新聞協会、著作権法の早急な改正を要望…AI無断学習容認で偽情報拡散の危険性も

https://www.yomiuri.co.jp/national/20231107-OYT1T50202/

2023年11月8日 最終閲覧日:2023年11月15日

 

日経新聞電子版「生成AIが変える社会と経済 リスクを制御できるか-本社コメンテーター 村山恵一 〜『日本の論点2024』から」https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD302L00Q3A031C2000000/

2023年11月5日 最終閲覧日:2023年11月15日