私立大学法人の1割に経営悪化の兆候が見られ、最悪の場合には行き詰まる恐れがあるといいます。そのため、文科省は破綻した大学にいる学生らが円滑に移籍できる環境を整え、学生を保護していくための具体策を2024年度までにつくることが本日の日経新聞で紹介されています。今年8月の日本私立学校振興・共済事業団の調査発表によると、私大の53.3%にあたる320校で定員を下回ったといいます。前年度より37校増え、全体に占める割合は、47.3%から6ポイント増加しました。定員割れの深刻化が見て取れます。
この背景にあるのが、少子化問題です。6月に発表された、2022年の合計特殊出生率は、過去最低である「1.26」を記録し、出生数も77万747人と1899年の統計開始以来、初めて80万人を割りました。本記事では、国内で深刻化する少子化問題を考えていきます。
政府は今年に入り、「異次元の少子化対策」として、様々な対策を講じることを発表しました。6月には「こども未来戦力方針」も閣議決定され、その中では「加速化プラン」が策定されています。内閣官房こども未来戦略会議によると、①児童手当の拡充②出産等の経済的負担の軽減③医療費等の負担軽減④高等教育費の負担軽減⑤個人の主体的な「リ・スキリング」への直接支援⑥年収の壁(106万円/130万円)への対応⑦子育て世帯に対する住宅支援の強化、という7つ支援策がこのプランでは定められています。
本日の読売新聞では、社内で少子化対策について有識者を招いた会議を開催し、少子化対策や新聞報道のあり方に対して議論されたことが紹介されていました。先に挙げた「加速化プラン」に対しても取り上げられ、東京大の山口慎太郎教授は「政治家や官僚の多くが、予算を確保した政策を打てば大成功となり、検証が不十分だ」と述べていました。
こういった少子化対策に関する資料や記事を見ていると、政府が少子化問題に積極的な姿勢で取り組んでいることが見て取れ、プラスな評価はできます。ただ、支援策のひとつである児童手当に関しては疑問が残ります。現金給付をすれば、短期間であっても効果は生じると思いますが、この現金が各家庭でどう使われるのかも判断できず、単なるばらまきに終わってしまうと考えるからです。手当を配るよりも保育士の確保や保育施設の拡充などにあてた方が、この先の未来を想定すると持続的な効果が期待できるのではないかと思います。
政府内での定額減税を巡る議論からは、先が見えず迷走しているようにも感じてしまいます。こういった状態では、少子化対策をじっくりと議論することなどできないと思います。加えて、巨額な財源が必要とされるのが少子化対策です。財源として新たな税収が必要なのに減税してしまうようでは、本当にこの問題を解決する覚悟があるのでしょうか。政府にはまずは財源をどう確保していくのか、そこから示していただきたいです。
参考記事
4日付 読売新聞朝刊(12版)10面(特別面)「報道と紙面を考える 第31回懇談会『少子化多角的な視点で』」
4日付 日経新聞朝刊(13版)1面「私大破綻なら学生保護」
8月30日付け読売新聞オンライン「定員割れの私立大、初めて5割超に…少子化背景に地方・小規模で深刻」
6月3日付け朝日新聞デジタル「出生、最小77万人 昨年、出生率も最低1.26」
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