ジャパンモビリティショーは幅広いメディアに取材の門戸を開いており、「あらたにす」の面々も10月25日のプレスデーに参加する機会を得た。大きなカメラを持った報道陣や海外の記者たちに囲まれながら会場を巡ると、なんだか一足飛びにプロになった気分になった。
一緒に行った仲間と会場マップを載せたアプリを眺めていると、食用コオロギのブースを発見した。「車のショーに食用コオロギ?」となったが、逆に面白そうなので行ってみることにした。
このブースを設けていたのは「株式会社JTECT」という愛知県の会社。普段は自動車部品、ベアリング、工作機械などの製造を手掛けている。モビリティショー=車の展示会、という固定観念に囚われていた筆者は、「なんでコオロギなんですか?」と聞かずにはいられなかった。
「食用コオロギを飼育する時の育成室の自動清掃や、AIによるコオロギのストレス研究などに自社の技術が活かせると考えているからです」と担当者は答えてくれた。確かにブースの見出しには「JTECTの自動化・IoT技術/品質管理」とあり、技術力をアピールするやり方は必ずしも製品とは限らないことを知った。
同社では飼育から加工までの技術があり、タイやメキシコなどでは昆虫食文化が発達していることから海外進出も狙っていると意欲を見せていた。ただ、まだ事業化には至らず試食も出来なかったが、味はパウダーにすると、エビやカニのような甲殻類っぽいとのこと。言われないとコオロギとは分からないそうだ。「日本でも蜂の子とかイナゴを食べる文化がありますもんね」と尋ねると、「そうなんですけどね。意外と反発も大きくて驚いているくらいです。」と意外な回答が返ってきた。
「徳島の高校でコオロギパウダーを使って炎上したの覚えてますか」。これは徳島県で全国初となるコオロギパウダーを使った給食に、「子供に食べさせるな」というクレームが相次いだ事件のことだ。言われてからそんなニュースあったかもしれないと突然思い出した。「あの炎上以来、無印さんがやっているコオロギせんべいとかも下火です。ただ、うちは必ず社会問題の解決になると信じているので社内はポジティブです(笑)」。明るい声が返ってきたが、昆虫食は技術的には実用段階でも、まだ心理的なハードルは高いことを感じた。
実際に行ってみて本当にモビリティショーのイメージが変わった。車だけでなく、二輪車や電動パーソナルモビリティの展示。それも会場内を移動できる機種も用意されていた。また、人だけでなく配膳ロボットや配送ロボットなどのモノの移動も対象に加わっている。さらには、3Dプリンターによる転送食や今回取材した食用コオロギなど、技術力の応用による「移動可能性」への模索が大いに感じられた。
「モーターショー」から「モビリティショー」に名前が変わったことにも納得できた。時間のある方は足を運んでみることを私もお勧めしたい。
参考記事:
25日付 日経電子版 「ジャパンモビリティショー開幕 トヨタなど新型EV披露」
ジャパンモビリティショー開幕 トヨタなど新型EV披露 – 日本経済新聞 (nikkei.com)
2022年11月18日付 日経電子版 「食用コオロギの粉末を学校給食に 全国初、まず徳島で」 食用コオロギの粉末を学校給食に 全国初、まず徳島で – 日本経済新聞 (nikkei.com)
参考資料:
JAPAN MOBILITY SHOW 2023 Japan Mobility Show (japan-mobility-show.com)
株式会社ジェイテクト トップページ|株式会社ジェイテクト (jtekt.co.jp)