岸田首相が税収増に伴う還元策として打ち出した所得税、住民税の減税。2024年度に限り、1人あたり4万円減税するとともに、低所得世帯向けに1世帯あたり7万円を給付する方針が示されましたが、所得制限を設けないことなどに対して自民党内からも疑問の声が上がっています。そんな今回の還元策について、新聞各社の指摘を踏まえつつ意見を述べたいと思います。
■還元することの是非
物価高で生活が苦しくなっている背景があるにせよ、そもそも還元する余裕が日本の財政にあるのでしょうか。今回の措置は、コロナ禍のなかで増えた税収のうち約3.5兆円が元手になっているようですが、一方で日本は、毎年何十兆円もの国債を発行しているのは周知の事実です。さらには、防衛力増強の財源として、25年以降に法人税などが引き上げられることもすでに決まっています。
還元とは言いつつも、集めた税金を手間と時間をかけて再度戻すだけでは、ただの二度手間でしかありません。コロナ禍のような緊急事態ではない今、必要なのは政府にしかできない、物価高への対策や賃金の上昇のための政策でしょう。
■一律に減税することの意義
年収2千万円以上の層は対象外とする所得制限案も出てはいるようですが、今の流れだと一律での減税になりかねません。横並びにこだわるのは、「還元」という言葉を使うことで経済成長への積極姿勢をアピールする思惑だと想像されますが、低迷する支持率を押し上げる点数稼ぎにしか見えません。そして、減税が一度きりであるにも関わらず給付にはしないのも、「減税」という言葉にこだわったためでしょう。百歩譲って還元するにしても、より即効性のある定額給付を日々の生活すらままならない低所得者に絞って実施すべきだと思います。
■働いたら負け?
また、非課税世帯(低所得世帯)とは支援額が異なることにも波紋が広がっています。この問題に関して、実業家のひろゆきさんも自身のX(旧Twitter)で触れていました。
ひろゆきさんのポスト(ツイート)には、26日現在で約12万の「いいね」がつくなど大きな反響を呼んでおり、コメント欄には賛同する声が多く見られました。住民税が非課税の世帯の多くは、年金暮らしの高齢者層。必ずしも低所得の生活困窮者ではないにも関わらず、働いている現役世代と比べ手厚いことが批判の根本にあります。賛否があると思いますが、筆者も還元だというのであれば給付額を一定にするか、働いている世代が報われる内容にするべきだと思いました。
様々な問題を抱えている今回の定額減税。これまでの動きをまとめると、的を射た政策ではないとあらためて感じます。目先の支持率や選挙にとらわれることなく、長期的な視点で物価高や賃上げに取り組むことこそが、政府が主権者に果たすべき真の還元だと言えるのではないでしょうか。
また、筆者は来年から社会人として税を納める立場になります。景気が一向に上向かない中で負担だけが増える日本社会には、希望が持てないままです。一人の若者として、将来に問題を先送りにするような政策はしないでほしいと重ねて強く言いたいです。
参考紙面:
・25日付 社説:所得税減税 意義も効果も疑問が拭えない : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)
・25日付 読売新聞朝刊(13版) 3面(総合)「減税 与党内に異論」
・26日付 所得制限案、自民に浮上 定額減税、年収2000万円以上は対象外:朝日新聞デジタル (asahi.com)
・26日付 首相、際立つ国会軽視 所得減税、具体策語らず 自民内不満「方針ありき」:朝日新聞デジタル (asahi.com)
・26日付 日本経済新聞朝刊(12版) 2面(総合1)「減税、自民内に募る不満」
参考資料:
・ひろゆき氏も「働いたら負け」税収増還元・非課税世帯へ7万円案に「納税意識失せます」ため息吹き荒れるSNS(SmartFLASH) – Yahoo!ニュース