今月13日、岸田首相は内閣改造と自民党役員人事を行いました。
過去最多タイとなる5人の女性閣僚の起用や、選対委員長への小渕優子氏の抜擢などの「サプライズ」がありましたが、筆者が最も驚いたのは外相の交代です。
◯突然の外相交代
今回の内閣改造で、外相は林芳正氏から上川陽子氏に交代しました。
上川氏は、ハーバード大学院への留学や、米上院議員の政策立案スタッフを務めた経験もある国際派。外相を務めるだけの能力は十分に持ち合わせていることでしょう。
ただ、このタイミングでの交代には、首をかしげざるを得ません。
ロシアによるウクライナ侵攻や対中関係の緊迫化など、日本を取り巻く安全保障環境は厳しさを増しており、外交の重要性は高まっています。また、日本は今年1年間、G7議長国を務めており、国際社会においてリーダーシップを発揮することが求められています。
外交の場では、外相同士の個人的な人間関係も重要であると言います。日本の外交手腕が問われている今、各国外相と信頼関係を構築してきた林氏を退任させることは得策とはいえないでしょう。
○「回転ドア」
林氏の在任期間が約1年10か月と、2年に満たずに終わったことも問題です。
外相は「日本の顔」ともいうべき存在です。その「顔」が、国内の事情で次々と変わるようでは、諸外国との関係構築に支障をきたしかねません。
小泉政権後、1年ほどで首相が次々と交代した際、海外メディアに「回転ドア」のようだと揶揄されました。短期間での首相の交代は、国際社会における日本の存在感の低下につながりかねません。
外相についても同じことが言えるでしょう。外交政策の継続性を高めるためにも外相の任期はより長くあるべきです。
◯首脳外交の重視
近年は首脳外交が重視される傾向のためか、外相の存在感は低下しているとの指摘はあります。
13日の記者会見で、岸田首相は首脳外交への意欲を随所ににじませました。念頭にあるのは「安倍外交」でしょう。
安倍元首相は、トランプ前米大統領と良好な関係を築きました。そのため、トランプ氏は同盟国軽視の姿勢をたびたび示していたものの、日米関係は良好でした。
ただ、これは裏を返せば、両首脳の関係が良好でなければ、日米関係が悪化していた可能性があるということです。
安定的な関係を築くためには、首脳外交一辺倒ではなく、外相さらには事務方レベルでの外交の強化も欠かせません。
参考記事:
9月14日付 朝日新聞朝刊3面「女性登用、首相が転換 「支持率上げ衆院解散」再選戦略描く 再改造内閣」
9月13日付 読売新聞夕刊(東京)1面「内閣改造 11人初入閣 女性最多5人 刷新感狙う 午後認証式」
2月14日付 読売新聞朝刊(東京)4面「[最長政権の軌跡 安倍晋三 回顧録](4)外交 日本の存在感高める」
参考資料:
かみかわ陽子オフィシャルサイト「プロフィール Profile」
首相官邸ホームページ「令和5年9月13日 岸田内閣総理大臣記者会見」