放課後になると、地域の子どもたちが集う児童館。家にランドセルを置いたら、友達と遊びに行く。みなさんも小さい頃、そんなことをしていたのではないでしょうか。全国には4000以上の児童館があると言います。
東京の西国分寺にあるクラブかたつむり。主にろう学校や特別支援学校に通う子どもたちが集まる学童クラブです。全国的にも、このような「学童」はあまりありません。
活動は火、水、金、土の週4日で、クラブに通う子どもたちは「なかま」と呼ばれています。今回、平日と土曜日の2日間、お邪魔させていただきました。
平日は学校が終わる時間に合わせ、近隣の立川ろう学校へ迎えに行きますが、土曜日は、10時前に西国分寺駅に集合し、バンに乗ってクラブへ。1日目のお迎えの際、手話を話すことのできない私はすごく緊張し、車の中でろうの職員の方に自己紹介の仕方など、いくつかを教えていただいたのを覚えています。学校のない土曜日、なかまたちは10時から夕方までをかたつむりで過ごします。
土曜日は、まず朝の会から始まります。会の進行を務めるのは、大人ではなく、子どもたち自身です。その日、クラブに集まったメンバーは、それぞれ前に出て近況を報告していきます。手話を使って伝えますが、それにコメントを返したり、笑ったりと、にぎやかです。
また、土曜日は「北海道」がテーマということで、それにちなんだ遊びやお昼ご飯を職員の方々が用意していました。北海道の観光地や地理、そしてスープカレーの本場での食べ方などを学んでいきます。
お昼ご飯を食べ終えると、手作りの道具を使って、クロスカントリーをして遊びました。障害物をよけながら、指定された「カニ歩き」や「ペンギン歩き」で、できるだけ早いゴールを目指していきます。
自由時間を挟み、帰りの会です。朝の会と同じく、担当のなかまによる司会で進んでいきます。自由時間で盛り上がった後だったためか、なかなか司会者に関心が集まらない時には、スイッチを押し、照明を点滅させることで注目させます。一人ずつ、椅子に上がり、今日の感想など、思い思いに話していきました。誰かが面白いことを言った時、LINEやSNSで私たち若者が使う、「面白い」「ウケる」といった意味として、なかまは手話で植物の「草」を表現していました。手話の中にも若者表現があるのだなぁと感じ、話し言葉でなくても、言語が持つ柔軟さや背景にある文化は変わらないと実感しました。
◇手話の現状
平成18年の厚生労働省の調査では、聴覚障害を持つ人のうち18.9%が手話や手話通訳をコミュニケーションのために使っているというデータがあります。実際に障がいを持つ人でも20%ほどしか使用していないことからも、健常者では使う人はもっと少なくなっているのでしょう。
筆者も手話を使うことのできない一人です。今回、クラブかたつむりを訪れて、周りの職員さんに多くのサポートしてもらい、子どもたちと関わることができました。ですが、話すことに慣れているため、言葉で伝えられないことや、手話でなかまが話していることが理解できないことに、もどかしさを感じることもありました。
手話だからというわけではないでしょう。英語でもネイティブの人たちばかりの空間ではきっと同じような感覚なると思います。ですが、英語をはじめとする外国語では、分からない単語があればすぐにスマホで意味を調べられ、Google翻訳やDeepLなどの翻訳アプリでは、自身の言いたいことを日本語で打ち込めば、違う言語に直してくれます。このように日本語と他の言語を双方向に繋ぐ「言葉のインフラ」は数多く存在します。また、自己研鑽のために自発的に英会話スクールに通う人も少なくありません。
視覚を通して理解する言葉というだけで、手話も話し言葉と同じ言語であることには、変わりありません。それでも、自身やその周りにろう者がいないと身に付ける機会がないというのが現状だと感じます。
確かに、コミュニケーションツールは手話だけではなく、筆談やスマホに文字を打ち込んで見せるなど、テキストでの意思疎通も可能です。ですが、もし健常者の人々にとっても手話がもっと身近になれば、障がいの壁をより低くすることができるのではないでしょうか。
参考資料: