【G 7広島サミット】現地で取材をして感じたこと

2023年5月19日、雨が降るなか主要7カ国首脳会議(G7サミット)が開幕しました。広島県出身の筆者はサミット会場へ行き、現地の雰囲気を肌で感じ、現地の方に取材をしてきました。取材は広島平和記念公園と宇品島の2か所です。

1週間が経ち、当時の興奮は収まりましたが、共同宣言の履行などサミットは多くの宿題を参加国に残しました。取材メモをもとに当時を振り返ります。

 

■19日午前 7カ国の首脳たち平和記念公園へ 私が広島市へ到着したのは10時27分でした。午前11時18分に全首脳が揃いました。その頃、あらゆる道が規制されているなか、どうしたら平和記念公園へ行けるかを考えながら、いくつもの道を通り平和記念公園へ向かっていました。あと少しのところで規制線が引かれ、「この道もダメだ」と落胆を繰り返しながらも、歩き続けました。

その途中、地元の方の不満の声が耳に入ってきました。「仕事にも行けん。」。平和記念公園付近を通って職場へ行く人にとって規制は不満の種でしょう。私はなんとか間に合い、平和記念公園沿いの道でカメラを持ってスタンバイしていました。周りには地元紙「中国新聞」や地方局「RCC」、そして全国紙やNHKの記者たちがいました。また他にも7カ国のトップを見ることを楽しみにしている市民がいました。大半は広島県民でしょう。

12時20分ごろ、7カ国の首脳たちが平和記念公園から車で出てきました。カナダのトルドー首相は観衆たちに手を振りながら通り過ぎて行きます。車の中ははっきりとは見えず車につけられている国旗を見てどの首相、大統領が乗っているか判断しました。

今回、海外6カ国のトップが原爆資料館を訪問したことはとても大きな意義があるとは思います。しかし、気になることがありました。それは米国のバイデン大統領が核攻撃を命じる端末機器、通称「核のフットボール」を平和記念公園に持ち込んだことです。核廃絶に向けた行動を訴え続ける、平和の象徴である公園に、核攻撃をいつでも命じることのできる核ボタンが持ち込まれることは矛盾しています。広島で起きた惨劇を考えた上で行動して欲しいと思いました。

 

■警備態勢

去年7月8日の安倍元首相銃撃事件や今年4月15日に起きた岸田首相の演説会場へ爆発物が投げ込まれる事件を踏まえて、厳重な警備態勢が敷かれました。国内で開かれるサミットの警備態勢としては過去最大級の約2万4千人の警察官が集まりました。サミット前に「平和記念公園で不審物が発見されたが、中身がお菓子だった」とのニュースを聞き、本当に厳重な警備態勢だということが感じられました。

では県民は今回の警備態勢をどう受け止めたのでしょうか。警備による道路の規制を不便に感じたのでしょうか。首脳を見に平和記念公園にきていた男性は「思ったよりも(首脳を)近くで見れたし、そこまで(警備態勢が厳重だとは)感じなかった。演説をしているのと車列で通るのとではリスクが違うんだろう」と話していました。ほかの男性は「あれでもう十分すぎるくらいじゃけど結構大変じゃろう。あんだけやらんと危なかろう」と話していました。また、宇品にお住まいの女性に生活で不便なことがあるか聞くと「全然!」という返事でした。カメラを持って宇品を訪れていた男性は「ここ(宇品)に来るまでにちょっと街中を通ったけど、交通規制がされていても負担になるほどではなかった。何かが起こるよりかは全然良い。念には念を入れてやったほうが良い」。平和記念公園では規制に憤りを見せている人もいましたが、不便を感じていない人もいることが分かりました。

 

■核廃絶に向けて

岸田文雄首相は被爆地である広島で「核兵器のない世界」の実現に向けてサミットが開催されたことをアピールしていました。また、それが広島サミットの意義であると話していました。しかし、障害は大きく簡単に核廃絶の道を進むことは難しそうです。今回参加している7カ国のうち米英仏の3カ国が核を所持しています。また、日本もアメリカの「核の傘」の下にいます。そうした国々が原爆資料館に訪問したことに意義はあると考えますが、それで核廃絶に繋がるとは思いません。もし、この3カ国が核を廃絶した場合、核を持つロシアと中国に支配されてしまうかもしれません。核は他国を傷つけるためだけでなく、牽制させる道具であり、そう簡単になくすことは難しいと考えます。立憲民主党の泉健太代表は、日本は核兵器禁止条約に批准していないが、せめてオブザーバー参加するべきだ、と国会で訴えました。広島県の人々はどう考えているのでしょうか。ある男性は「各国の首相、大統領があの原爆の記念館に滞在したということはすごい事だ。どういう気持ちだったんかなと思う。3カ国の国が核を持っているのに良い方向へ向かうのだろうか」と話していました。やはり今回のサミットに「核廃絶」で大きな期待を寄せていないことが見受けられました。

 

■国際メディアセンター 国際メディアセンターは情報収集や原稿を執筆する場です。ジャーナリストを目指す1人して国際メディアセンターを見に行こうと思い立ち、広島城の近くに位置する県総合体育館(広島グリーンアリーナ)へ向かいました。いつもはアーティアストのライブが行われる施設が世界に向けた情報発信の拠点となっていました。平和記念公園と同様に、厳重な警備体制が敷かれており中を覗いてみることも難しかったです。

センター内では原爆被害や被爆地の復興の歩み、県産物の魅力などを伝える展示がなされ、お好み焼きなどの特産品や日本酒が海外の記者たちの注目を集めていたと伝えられました。入ることはできませんでしたが、実際にここで記事が作られ、世の中に発信されているのだと考えるととてもワクワクしました。

今回のサミットで、被爆地広島を世界に発信することができたと思います。残念なことに、岸田首相は何度も核の問題に触れたものの、最終的に「核兵器禁止条約」に対して前向きな態度は示しませんでした。しかし、今回7カ国の首脳と招待国がそろって原爆資料館を訪問したことは、今後良い方向へ向かう第一歩となり得るかもしれません。

今回実際に広島へ取材に行き1番に感じたことは警備態勢の厳重さです。今までのサミットではテロが起こったこともありましたが、今回は防ぐことができたと思います。とはいえ何も公開しないサミットになってしまっては国民の関心は薄らいでしまうでしょう。だから、平和記念公園から宇品島へ向かう時の車列を市民が目にする機会ができたのはとてもよかったと思います。私も本当に各国の首脳が広島に集結しているのだと感動しました。

 

参考文献

・朝日新聞デジタル、「G7サミット巡り論戦 広島ビジョン「踏み込み不足」批判に首相は」、2023年5月24日、里見稔 西村圭史 笹川翔平、https://digital.asahi.com/articles/ASR5S6QRYR5SUTFK009.html?iref=pc_ss_date_article

・中国新聞デジタル、「サミット取材拠点「国際メディアセンター」閉鎖 延べ1万人が利用」、2023年5月22日、宮野史康、https://www.chugoku-np.co.jp/articles/-/309216

・朝日新聞デジタル、「サミット警備2万4千人動員 国内開催で過去最大級 首相襲撃で増強」、2023年5月17日、吉田伸八、https://digital.asahi.com/articles/ASR5K3SLMR5JUTIL011.html?iref=pc_ss_date_article