「メットに入るには、女性は裸にならねばならないの?」。1985年にニューヨークで生まれた匿名のアクティヴィスト集団、ゲリラ・ガールズ。ゴリラマスク姿で横たわる裸婦がアート界のジェンダーギャップを痛烈に批判しているポスターは、見る者に大きなインパクトを与えます。
筆者がアルバイトをしている美術館では、女性アーティストであるマリー・ローランサンやフリーダ・カーロの作品を展示していることもあり、女性をアートの主体として捉えることはごく自然なことでした。しかし、美術史を学び始めてからそれが一転します。名を連ねているのは、男性アーティストばかり。その一方で、裸婦像は多く描かれています。ゲリラ・ガールズのポスターによれば、モダンアート界において女性アーティストは4パーセント未満なのに対して、裸体画の76パーセントは女性なのです。女性はアートの客体とされていたのです。あくまで男性に観られるものに過ぎなかったのでしょう。20世紀に活躍したアーティスト、マリー・ローランサンやフリーダ・カーロは、独自のスタイルで自画像を描いています。彼女らは、アートの客体ではなく、主体であったはずです。現代のアートシーンでは、ブラック・アートやフェミニズム・アートといったマイノリティによるアートへの注目が高まっています。
現在、画像生成AIが話題になっています。テキストを打ち込むだけで、簡単にイラストが作ることができるのです。しかし、このAIは訓練データからの学習に基づいて画像を生成するため、私たちの持つバイアスがより一層表面化されるのです。CEOや教授と入力すると男性の画像ばかりになり、看護師だと女性の画像ばかりになるという具合です。これでは、ジェンダーや人種による差別を助長する恐れがあります。
画家と入力すれば、男性アーティストの画像でいっぱいになるのでしょうか。
参考記事:
5月13日付 画像生成AI、西洋アートばかり? 偏見助長の恐れ、解消に難しさも:朝日新聞デジタル (asahi.com)
5月10日付 日本経済新聞(夕刊) 12面(夕刊文化)
4月20日付 女性は「男性に観られる」存在か? ゲリラ・ガールズがばらまく警告:朝日新聞デジタル (asahi.com)