赤、青、黄、オレンジ、紫、緑…
様々に彩られたテントのもとに企業や団体、大使館、飲食店など220以上のブースが立ち並び、虹色のマントやフラッグを身につけた人々が行きかう様子は、文字通りフェスティバルでした。
4月22日と23日に代々木公園で開催された、「東京レインボープライド2023」に行ってきました。筆者が好きなユニットが23日の野外ステージに出演していたことから出かけたのですが、予想以上の人出に驚くとともに、ステージでのパフォーマンスや出展者との会話を楽しんでいる人々を見て、社会問題の提起という性格を持つイベントでありながら、その前提としてみんなが楽しむことを大切にしているのが印象的でした。
主催したのはNPO法人「東京レインボープライド」で、主催者発表によれば22日は10万人、23日は13万人を動員したそうです。LGBTQをはじめとするセクシュアル・マイノリティの存在を社会に広め「“性”と“生”の多様性」を祝福する集いで、今年のテーマは「変わるまで、続ける」。
LGBTQに限らず、男女格差や苗字選択など、多様であるとともに、公平にそして幸せに誰もが暮らせる未来を願う気持ちが込められています。
何年か前と比較すると、マイノリティの存在や多様性を重視する考えが受け入れられてきたようにも感じますが、実際に私たちの社会はより良く変化しているのでしょうか。
今月行われた地方統一選の結果を見ると、女性の政界参加は徐々に進んできているようです。23日に投開票された統一地方選挙後半の市議選では、全国で1457人の女性候補が当選し、改選定数に占める割合は22.0%と前回より3.6ポイント上昇。初めて2割を超えました。顔ぶれにも多様性が感じられます。東京都北区議選に挑んだ佐藤古都さんは告示翌日に出産したばかりで初当選を果たしました。また長崎市議選で初当選した都留康敏さんは、戸籍上は男性だが自己認識がどちらの性でもない「クエスチョニング」だとカミングアウトし、誰もが自分らしく活躍できる長崎市をつくるという思いを訴えてきました。
育児中などの候補者が、自身の子どもを伴って選挙活動をすることも、一定の条件で許されることがはっきりしたのも注目されます。公職選挙法は18歳未満は選挙運動をできないと定めていますが、こどもをおぶっての街頭活動が公選法に違反するか議論になっていました。これについて総務省が見解を発表したのです。
それによると、単に候補者やスタッフに子どもが同行すること自体は禁じられていません。しかし、有権者に対して手を振るなど直接働きかける行為は、公選法に抵触するおそれがあるとのことです。こういった疑問点が整理されることで、今後立候補する人々の不安や懸念が少しでも減ることを願っています。
一方で選択的夫婦別姓制度や同性カップルの法律上の結婚に関する法の整備は進められていません。職場で婚姻前の苗字を使用したり、自治体が導入するパートナーシップ制度を活用したりする方法はありますが、解決すべき課題に正面から向き合うのでなく、代替手段の提示で十分なのか疑問が残ります。
「自分が自分じゃなかったら出会えなかった奇跡に感謝」
東京レインボープライド2023に参加した、筆者の好きなユニットのメンバーの一人が、ステージの最後に語り掛けた言葉です。ありのままの自分を大切にし、セクシュアリティをオープンにして活動するに至るまで、どんなことを乗り越えてきたのかに思いを馳せると、胸が熱くなりました。
地方統一選挙の成果や、子どもを伴った選挙活動への見解発表など、ひとつひとつの変化は微々たるものかもしれません。しかし変化を重ねていった先に、誰もがその人らしく生きられる未来があるならば、イベントのテーマ通り、「変わるまで、続ける」しかないのでしょう。筆者自身も、変化について考えるだけでなく、声をあげ行動できる大人でありたいです。
【参考記事・資料】
参考記事:
24日付 読売新聞夕刊(東京4版)11面「新風 行政に議会に」
24日付 朝日新聞(東京15版)8面(オピニオン)『序破急 「苦しみの根幹」に触れる』
25日付 日本経済新聞(東京12版)4面「女性市議、初の2割超」関連記事38面
参考資料:
シブヤ経済新聞『代々木公園で「東京レインボープライド」2日間で延べ24万人動員』(2023年4月24日)
東京レインボープライド2023 テーマ決定のお知らせ/Announcement of Tokyo Rainbow Pride 2023 Theme | 東京レインボープライド2023
総務省「候補者が自身のこどもを伴って行う活動について」(令和5年3月1日)