◇統一地方選挙
今日4月23日は、統一地方選挙後半戦の投開票日です。128市区町村で首長選が、551市区町村で議会選がそれぞれ行われ、東京都内の一部を除いて即日開票されます。総務省によると、統一地方選の制度は、「有権者の選挙への意識を全国的に高め、また、選挙の円滑かつ効率的な執行を図る目的」で1947年に始まりました。
◇低い投票率
近年、地方選の投票率は低下し続けています。総務省によると、4月9日に投開票された統一地方選前半戦での平均投票率は、41道府県議選で41.85%、9知事選で46.78%と、いずれも過去最低を記録しました。1975年には知事選、道府県議選、市区町村長・議員選の全てで7割を超えていたことを考えると、投票率の低下は顕著です。
◇投票しない若年層
特に若年層が投票所に足を向けない傾向にあります。2022年夏の参議院選挙では、60代の投票率が65%だったのに対して、20代は33%。60代のほぼ半分の水準にとどまりました。
選挙に対する印象について、学生の友人数名に取材したところ、「選挙活動がうるさく、迷惑だ」や「候補者が多くて投票先がわからない」などの意見が出ました。こうしたネガティヴなイメージが、若年層の選挙離れを引き起こしているのかもしれません。私たちの民主主義は機能不全を起こしているのでしょうか。
◇くじ引き民主主義?
そもそも、民主主義は、「選挙」によって代表者を選出する代議制民主主義以外にも、多種多様な形態が考えられます。ここでは、最近、注目を集めている「くじ引き民主主義」をご紹介します。これは、市民の代表である議員を選挙ではなく無作為に選びだし、政治の意思決定に関与させることを目指すものです。同志社大の吉田徹教授などが提唱しています。近年では、それに類する試みがいくつかなされています。
◇「気候市民会議」
2022年4月、東京都武蔵野市は、住民基本台帳から無作為に選んだ市民1500人に対して、気候変動について考える「気候市民会議」への案内状を送付しました。もちろん、この会議の結果が、政策に直接反映されるわけではありません。しかし、議論に加わりたい人を募る形式ではなく、無作為に代表を選ぶやり方は、従来の代議制民主主義の発想とは趣が異なります。
◇声なき声を拾う
議員を選挙で決めるとなると、声の大きい人や主張の強い人が有利になりやすく、困っているけれども声を上げづらいといった人たちの意見が反映されにくくなります。議員を無作為に選び出せば、拾われることのなかった意見も政治に反映されやすくなるというメリットがあります。
◇常に民主主義をアップデートしていく意識を
もちろん、「くじ引き民主主義」が全ての問題を解決するものではないでしょう。しかし、現行制度が本当に時代に即したものなのか、そして最善のものなのか、常に問い続ける姿勢が求められているのではないでしょうか。民主主義に失望し、見放すのではなく、改善点を探しながら、アップデートしていくことが求められていると思います。
<参考文献>
・22日付朝日新聞朝刊(東京14版)4面(総合)『衆参5補選、あす投開票 統一地方選、後半戦も』
・21日付読売新聞朝刊(東京14版)35面(社会)『統一地方選の投票率は低下の一途…前半戦は知事選46・78%、道府県議選41・85%』
・NHK『政治不信を防ぐ“くじ引き民主主義”』(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221004/k10013840071000.html)(閲覧日2023年4月23日)
・総務省『なるほど選挙 選挙の種類』(https://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/naruhodo/naruhodo03.html)(閲覧日2023年4月23日)
・総務省『国政選挙における年代別投票率について』(https://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/news/sonota/nendaibetu/)(閲覧日2023年4月23日)
・吉田徹『くじ引き民主主義 政治にイノヴェーションを起こす』光文社新書、2021年。