戦闘が激化しているアフリカ北東部スーダンの在留邦人の退避に向け、浜田靖一防衛相は20日、航空自衛隊の輸送機をアフリカ東部のジブチまで移動させ、待機するよう命じた。(「自衛隊機、ジブチで待機 陸上輸送も検討 スーダン邦人退避」朝日新聞2023年4月21日)
スーダン危機で、在留邦人を退避させるのに欠かせないジブチには、自衛隊唯一の海外拠点があります。しかし、それ以上の情報を知る機会は無いように感じます。そこで、今回はジブチについて調べました。そこからは、この国の地理的重要性が読み取れます。
基本情報は以下の通りです。
【基本情報】
面積 23,200平方キロメートル(四国の約1.3倍)
人口 100.2万人(2021年、世銀)
首都 ジブチ
民族 ソマリア系イッサ族(50%)、エチオピア系アファール族(37%)
言語 アラビア語、フランス語
宗教 イスラム教(94%)、キリスト教(6%)
(外務省:ジブチ基礎データ:ジブチ基礎データ|外務省 (mofa.go.jp))
ジブチはアフリカ東部、スエズ運河の南方、紅海からの入口に位置しています。また一帯は、「アフリカの角」と呼ばれる要衝でもあります。「アフリカの角」はアラビア半島との文化や商業分野の交流を支えてきました。ジブチは地理的にはアフリカに属しますが、「アラブ連盟」という地域協力機構に所属していることから、アラビア的な風土が強いことがわかります。
最高気温71.5度を記録するほどの高温地帯で、降水量が少ないため、農業が難しい地域です。そんな国の経済を支えているのは貿易事業です。
また、ジブチ港は、隣接する内陸国、エチオピアの貿易窓口の役割も担ってきました。それだけではなく、紅海の入口という特性から、古くからヨーロッパとアジアを結ぶ海運の拠点となっています。2018年には、アフリカ最大となる自由貿易区であるジブチ国際自由貿易区が一部完成し、世界的な国際貿易拠点として存在感を強めています。その開発は、中国の資金援助で賄われており、習近平政権が掲げる「一帯一路」構想の重要な拠点で、中国で唯一の海外軍事基地もあります。
一方、スエズ運河を開削したフランスとも、深い関係性があります。かつては、フランス領ソマリランドと呼ばれ、1977年に独立して現在に至ります。公用語にフランス語が指定されていたり、現在もフランス軍が駐留していたりなど、旧宗主国との関係は現在も深いです。
紛争が長引いている隣国のソマリアが無政府状態になったことで、一帯の情勢は周辺地域も巻き込んで不安定になり、海賊が多発しています。船舶に危害を与え、海上輸送において大きな障害となっているソマリア海賊の対策拠点として、ジブチには自衛隊や中国軍、フランス軍だけでなく、アメリカ、イタリアなどの軍隊も駐留しています。こうした外国軍が落とす金も経済を支えています。
ジブチはこれまでにも在留邦人の退避で重要な役割を負ったことがあります。2016年に南スーダンの治安が悪化した際、航空自衛隊の輸送機がジブチを経由地にして邦人輸送を実施しました。
国際貿易ルートの治安維持という役割だけでなく、不安定な情勢が続くアフリカで活動する日本人を安全な場所に退避させる役割も担っていることがわかります。
地政学的に重要なジブチは発展が予想されます。今後の国際社会を考える上で、この国を知ることは一段と重要になるはずです。
参考紙面
自衛隊機、ジブチで待機 陸上輸送も検討 スーダン邦人退避:朝日新聞デジタル (asahi.com)
参考資料
ジブチは「インテリジェンスの要衝」 自衛隊拠点、邦人救出の足場に:朝日新聞デジタル (asahi.com)
ジブチについて – ジブチ共和国大使館 (djiboutiembassy.jp)
ジブチに「アフリカ最大」の自由貿易区が一部完成、翻る中国国旗 写真10枚 国際ニュース:AFPBB News
最高気温71度!?暑すぎる街ジブチシティーの生活ぶりとは|TBSテレビ
空自機、邦人輸送を実施 南スーダンの大使館員4人 – サッと見ニュース – 産経フォト (sankei.com)
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