中古住宅市場拡大を目指して

 少子高齢化の影響でしょうか、散歩をしていると都内でも空き家を目にすることが増えたと感じます。それにもかかわらず新築住宅、とくに高層マンションは乱立しています。現代の日本では住宅需給の不一致が起きているのではないでしょうか。

 4月20日付の日経新聞朝刊で、評価モデルに関する国土交通省の取り組みが報じられていました。評価要素に住宅の担保価値に立地の良さや省エネ改修などを反映する評価モデルが普及すれば、中古住宅でもローンを組みやすくなり、取引を活性化させる効果が期待できます。

  日本での住宅市場に占める中古の割合は15%で、アメリカの80%やイギリスの89%に比べて極端に低いようです。新築志向がきわめて強い構造を変化させなければ、人口減少に伴い空き家が急速に増える弊害が生じます。NPO法人空家・空地管理センターによると2033年ごろには全国の空き家数が全住宅の3分の1に当たる2,150万戸に及ぶと予測されています。

 空き家は売却用、賃貸用、二次利用、その他の4種類に分けられています。売却用・賃貸用は不動産会社が管理する物件で、二次利用は別荘を指します。その他は上記3種類のどれにも当てはまらない空き家で、所有者が離れた地域に居住していたり、相続の過程で所有者があいまいになったりしたため、管理が適切に行われない恐れがある建物が含まれます。管理が行き届いていない空き家が増えると倒壊や景観の乱れなど、周辺に悪影響を及ぼしかねません。

 一方で新築住宅の建設は続きます。グラフを見ても新設住宅着工数は2013年から毎年約100万戸とほぼ横ばいです。この理由として投資目的の需要が挙げられます。高層マンションの購入と転売を繰り返している「空中族」と呼ばれる投資家もいます。また、日本は外国人の不動産購入への規制が極めて緩いため、海外マネーによる投資という例も少なくありません。目的は何であれ、多くの買い手がいることからデベロッパーは建設を止めません。実需を上回る供給という負のサイクルによって空き家が増えしまうのです。

 新たな評価モデルは新築需要が過大な日本の市場を改善させるきっかけになるかもしれません。築年数20年を超えると建物の担保価値が0になってしまいますが、それ以上でもしっかりとしたノベーションすれば問題なく住むことができます。現に、かなり年数が経った住宅も販売されています。国交省の取り組みを機に中古住宅市場が活気を取り戻し、空き家問題解決の一歩となってほしいです。

 

【参考資料】

20日付 日本経済新聞5面「中古住宅の価値、適正評価」

NPO法人空家・空地管理センター

https://www.akiya-akichi.or.jp/what/troubles/