愛知県一宮市の市立中学校に今年度、新しい制服が導入されました。子どもや保護者、教員が意見を出し合い、2年ほどかけて形作っていったものです。それまでの制服は、私の母校一宮高校と同じだったこともあり、少し寂しく思います。けれど、当事者の声を反映させて考えられて制服は、きっと子どもや地域からも愛されていくでしょう。上着は男女共通のブレザー、ボトムはスラックス、スカート、キュロットが選べるようになっています。また、地元尾州の素材を使うことが推奨され、ブレザーのボタンにも一宮らしさが盛り込まれています。
「自分が着るものは自分で決める」
私が6年間着た制服は、セーラー服。冬のスカートは脚が冷えて、スラックスだったらなと思ったものです。ただ、当時は決められた制服を着るほかなかったのです。誰かが決めたものにただ従うのではなく、自分で決めるという体験を積み重ねることは、若いひとにとって重要なことでしょう。自分のことを自由に決める権利は、誰にでもあるのだと認識できるからです。
成人式には、パンツスーツで出席しました。そこで感じたのは、自分で決められることの楽しさです。色鮮やかな振袖を着るもよし。黒く艶やかなスーツもよし。各々が自分の着たいものを身にまとい、笑顔でいたことが印象的でした。自分らしさを表現できる場だったと思います。
これは着るものに限ったことではありません。大学がキャンパスを整備する前に、新学部を設置する。政府が防衛費の増額を補うために増税する。どれも私の生活にかかわることなのに、十分な説明も対話もなく進められていきます。自分に与えられた権利について考えることがなければ聞き流してしまうかもしれません。
自分のことは自分で決められる。自分らしくいられる。一宮市の新しい制服がそのような社会を築く第一歩になることを願います。
参考記事:
25日付 朝日新聞朝刊(愛知13版) 22面(地域総合)