「箱根駅伝」影の主役⁉大学スポーツ新聞部のスケジュール

新年あけましておめでとうございます。皆様はお正月をいかがお過ごしでしょうか。筆者は箱根駅伝を見て過ごしています。我が明治大学競走部は一区で区間賞を取りました。最終的に往路は12位で終わりましたが、復路に期待です。結果がどうであれ、明治大学が活躍しているのを見るのは、とても嬉しい気分になります。

箱根駅伝は東京・大手町にある読売新聞東京本社前から箱根の芦ノ湖まで往復約217kmを10人がたすきをつなぎます。競走部の選手たちにとっては一年間の集大成です。「箱根の山は天下の嶮 函谷關もものならず」です。緊張のなか上がり下りの激しい長距離を走るのは大変でしょう。しかし大変なのは選手だけではなく、大学スポーツ新聞の記者にとっても同様のようです。2020年に明大スポーツ新聞部の競走部担当として箱根駅伝を取材した入野祐太さん(明治大学・4年)にお話を伺いました。

2021年11月MARCH対抗戦で取材をしている入野さん(左)

入野さん提供

 

箱根駅伝に向けての取材は前年の9月頃から始まります。夏合宿やトラック競技の大会取材があるからです。翌10月には箱根駅伝の予選会があります。明治大学はここ数年、箱根のシード権(前回大会で10位以内に与えられる予選免除の特権)を取れていないため、この予選会で勝ち上がらなければなりません。当然、取材にも熱が入るそうです。11月には大学三大駅伝の一つ全日本大学駅伝対抗選手権大会があります。これは愛知県の熱田神宮から三重県の伊勢神宮を走ります。箱根駅伝と異なり関東以外の大学も参加できるため、関西圏など全国の学生ランナーにとっては一大イベントです。2022年の大会では明治大学は9位。惜しくもシード権を逃しました。

ちなみに箱根駅伝、全日本駅伝、出雲駅伝が大学三大駅伝ですが、このうち出雲駅伝では基本的に関東の大学が出場するには箱根駅伝のシード権が必要になります。そのため、明大には長い間縁のない大会となっています。

さて箱根駅伝の予選会を勝ち抜くと年末に箱根駅伝で走る選手が発表されます。

メンバーが決まると、明治大学の全体取材会が開かれます。これは明大スポーツに限らず一般の新聞社でも参加可能です。監督や選手に取材できるビッグイベントです。選ばれたメンバーを中心に取材し、「明大スポーツ」の箱根駅伝号を作成します。12月10日に取材会が開かれ、22日には発行にこぎつけました。12日間で一つの新聞を作るのは、学業や就活、アルバイトなどで忙しい学生にはきつい作業ですが、毎年なんとか新聞を出してきました。そして年が明けるとすぐに本番です。

明大スポーツでは取材班を4グループに分けて本番に望みます。一つはゴール前に陣取り、最後の瞬間の撮影に集中する班で、その他は決められた区間で写真を撮ります。入野さんは2区と5区の担当だったそうです。撮影する場所は毎年大体決まっており、一つの場所が終わると次の場所まで電車で移動します。シャッターチャンスは一瞬です。数少ない機会をものにするために、選手が来る1時間前には撮影拠点に陣取り、光のかげんやシャッター速度、ISO感度を調整します。

紙面に載せる際に、ISOが1600以上だと画像が荒くなり、使い物になりません。天気が良ければそこまで気にする必要がないのですが、曇り空や雨だと試行錯誤を繰り返すことになります。幸か不幸か、明治大学は例年、一番になることはありません。そのため先行する他大学の選手で撮影の具合を確かめ、本命の撮影へと臨みます。もちろん、いくら準備してもうまく撮れないこともあります。その際は、他大学の新聞と写真を融通しあうなど連携するそうです。

1日目が終わると、短時間ですが選手や監督に取材します。比較的バタバタしている状況のため、じゃまにならないように手短にコメントを取り、Web版に投稿します。ただ、昨年や一昨年は対面取材ができないため、電話での取材になりました。事前に競走部の主務にアポイントを取り、記者と選手・監督双方が都合のつく時間を設定します。対面での取材であれば長くても10分程度しか話せませんが、電話での場合は30分ほど時間をもらえたこともあったそうです。コロナ禍では沿道に立てなかったため対面の取材や撮影はできませんでした。しかし、選手からのコメントはより密度の濃いものを得られたという、なんとも悩ましい状況が生じたそうです。

2日目の復路も往路と同じようなスケジュールです。駅伝が終わったあとは、大学ごとに結果報告会と祝賀会があり、そこでも関係者に取材することができます。ただ、区間賞を取った選手はドーピング検査やTV番組への取材のために報告会に来られないこともあり、そうなると一番の注目選手から話を聞けません。実際に入野さんが担当していた20年は7区で区間新記録をだした阿部弘輝選手(当時4年生)が報告会に姿を見せられなかったようです。

こうして出来上がった紙面は以前であれば大学の前などで手渡ししていました。しかし、コロナ禍ではそれが禁じられ、インターネットで販売したり、大学の一画に置き、無料で取っていけるようにしたり、工夫しています。昨年は毎月大学から学生に送られる資料に添えられていました。明大スポーツは1月で4年生が引退します。そのため配置換えがあり、競走部担当は一区切りし、別の競技の取材の準備をすることになります。

今年の箱根駅伝も例年通り、明治大学の成績はぱっとしません。明日の復路でなんとかシード権獲得のラインまで持っていってもらいたいものです。また、現役の明大スポーツの取材陣が今大会をどのように書くのか非常に楽しみです。

 

参考記事

読売新聞オンライン「3冠狙う駒沢大が19年ぶり往路優勝…2位は中央大、前年王者の青山学院大3位」

https://www.yomiuri.co.jp/hakone-ekiden/news/20230101-OYT1T50062/

 

箱根駅伝公式HP

https://www.hakone-ekiden.jp/

明大スポーツ新聞部公式Webサイト

https://meisupo.net/