偶然。いや、必然でしょうか。ライバル紙である朝日新聞と読売新聞3面の見出しにはともに「アベノミクス試練」の文字が。株安・円高の流れが止まらず、市場は混乱しています。12日の東証株式市場で日経平均株価は、約1年4ヶ月ぶりに1万5000円を割り込みました。円高による日本企業の業績悪化も加わり、株安に拍車がかかっているようです。
市場に広がる一連の混乱の背景には何があるのでしょうか。実態が不透明なまま、景気に減速感が強まる中国の存在が大きいようです。成長率は6%台とされていますが、その数字を信じる市場関係者は少ないと日経新聞にあります。一国の存在感の大きさが浮き彫りになる一方、世界経済を引っ張っていく国がいないという危機感も覚えます。
本格化した春闘、賃上げ交渉にも影響が出る見込みです。大企業を中心に政府への賃上げ要請を受け入れる機運が高まっていましたが、海外経済への不透明感が増し、業績予想の下方修正が続いています。トヨタ自動車労組の鶴岡光行委員長は12日の記者会見で、「会社はこうした急激な変化に危機意識を持ってくる。大変厳しい交渉になる」と語っています。大阪版の紙面では、関西景気を不安視する記事も目立ちます。円高の影響により、ある台湾人観光客の男性は、時計を買うのを諦めたと話します。円高が進めば外国人観光客の「爆買い」も減少するでしょう。
筆者が記事を読んで思ったことは、政府と企業側の「溝」です。日銀の黒田総裁は12日、「マイナス金利政策が影響しているとは考えていない」と述べ、「直接に国民生活に大きなマイナスになるということは考えられない」と話します。菅官房長官は「日本の経済の足腰はしっかりしており、市場心理は悲観的すぎる」と強調。安倍首相も「円高は日本が信用されているからだ」と語りました。
企業側には、世界経済の混乱にともなう「不安」が広がっている。しかし政府側は一貫して日本経済の「安定」を主張。政府が国内の経済の安定を言い張りたい気持ちは分かりますが、両者の落差に混乱してしまいます。
先行きの見えない世界経済。日本国内にも少なからず漂う不安。「試練」に直面していることを認めて、打開策を模索することが政府に求められているのではないでしょうか。
参考記事:
13日付 朝日新聞朝刊(大阪14版)1,3,9面
同日付 読売新聞朝刊(大阪14版)1,3,4,9面
同日付 日本経済新聞朝刊(大阪14版)1,3面