デジタルネイティブが情報Ⅰの試作問題解いてみた 必要な実践力は学校で養える?

木曜の朝刊紙面に2025年1月から再編される大学入学共通テストの試作問題が掲載された。やはり一際目を引くのが新設される「情報Ⅰ」。筆者の通った私立高校では、1年生の時に週1時間だけの授業だった。これが今の高校1年生からは必修化されるというのだから、情報化社会が着実に進んでいることを感じる。ではいわゆるデジタルネイティブ世代の大学生が解くと何点くらい取れるのか、自ら検証してみた。

まずは結果から。第1問が20/20、第2問が15/30、第3問が17/25、第4問が19/25で合計71点。高いのか低いのかはわからないが、個人的には健闘した方だと思う。制限時間は60分だったが、48分くらいで解き終わった。量が多いだとか、習っていないと手も足も出ないということも基本的にはないように感じた。

解いていて思ったのは、新聞でも書かれている通り「実践」に重点が置かれているということだ。例えば第3問。支払いとお釣りに使う枚数を最小にするプログラムを作る問題で、誘導に乗れば言っていることはわかるが、プログラミングのような画面が穴埋めになっているため、プログラミングをやったことがあるかどうかで問題の解きやすさが変わると感じた。

また、第2問のBや第4問もそうだ。グラフ問題で読み取ることはもちろん、その後のデータの活用まで視野に入れているような問題設計になっている。解き方のテクニックというより、こうしたデータに基づく分析をやったり考えたりしたことがあるかが、出来を左右しそうだ。実際、筆者もプログラミングやグラフ問題での失点が目立った。

ただ、教育の現場はこの「実践」を十分にやれる状況ではないかもしれない。文部科学省によると、公立高校の情報担当の教員のうち16%が情報科の正規免許を持っていないことが分かった。これでは授業内容や指導内容に偏りが出る懸念がある。プログラミングやデータ分析は一般企業の方が先行していることから、民間人材の起用にも期待がかかるものの、教職課程を経ていない人への「特別免許」の授与件数は一般の教員免許のわずか0.1%程度。民間からの登用にはまだまだ時間がかかりそうだ。

情報Ⅰでの点数を採用するかどうか大学の足並みが揃っていないとはいえ、もし自分が行きたい大学が採用するとなれば勉強しないわけにはいかない。しかし高校で対策を講じられないとなれば塾に通ったり、新たな教材を使ったりして学ぶしかない。これからの時代に合わせて情報に強い人材の育成は必要不可欠だが、収入格差や地域格差によって学ぶことができず、選択肢が狭まっていくような足枷にしてはならない。逆に選択肢が広がる新たな領域として「情報Ⅰ」のテストが導入されることを願う。

 

参考記事:

10日付 日本経済新聞朝刊 42面(社会) 「新設の『情報』実践力重視」

10日付 読売新聞朝刊 30面(社会) 「刷新共通テスト 試作問題」

10日付 朝日新聞朝刊 24,25面 「資料読み考える力 測る」

 

2日付 日経電子版 「『民間先生』0.1%だけ 逆戻りの懸念も」

やっぱり変だよ、日本の教育2 「民間先生」0.1%だけ: 日本経済新聞 (nikkei.com)

9日付 日経電子版 「大学入試新設『情報』、教員足りない 16%正規免許なし」

「情報」正規免許なし、公立高16%: 日本経済新聞 (nikkei.com)

 

参考資料:

大学入学共通テストセンター 「令和7年度試験の問題作成の方向性、試作問題等」

令和7年度試験の問題作成の方向性,試作問題等|大学入試センター (dnc.ac.jp)