22年前の今日、10月22日に筆者は体重3180グラムで誕生しました。平成12年の平均出児体重は3050グラムなので、標準よりも太った比較的健康的な体での出生ということになります。そんな男児もすくすく成長し、今では体重64キログラムです。22年間両親には愛情を注がれ育ってきましたが、時には厳しくしつけられることも有りました。激しく叱られたことも有りましたし、平手打ちを受けたことも物置に閉じ込められたことも何度もあります。そのおかげもあり、今では責任ある一成人として生活できているのだと思います。両親も好きで厳しく接したわけではないのでしょう。心を痛めながらもしつけていただけたことには深く感謝しています。
さて、そんな昔ながらの教育も変わりつつあるようです。
政府は14日午前、女性の再婚禁止期間の廃止や嫡出推定制度の見直しを含んだ民法の改正案を閣議決定しました。その中には、親が子を戒める「懲戒権」の削除も含まれています。これまで懲戒権に対しては児童虐待を正当化する口実になっているとの指摘が多かったようです。これに伴い「体罰」や「心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動」も禁止されるとのことです。
懲戒権の元をたどると、1898年に制定された明治民法に行きつくようです。当時は子育ての手段として殴ったり、蹴ったり、叩いたりは当然のことで、民法上でも親は子どものしつけのためにこうした手段を行使しても良いとされてきました。その後、2011年の改正により、子の利益を目的とした行為以外は懲戒権に該当しないことが示されました。今回の閣議決定はこれを進めたもので、子の利益のためであっても親は体罰を与えたり、厳しく叱ったりすることができなくなります。
懲戒権削除の裏側には、何度も起こる児童虐待に対し、公的権力が介入しやすくする狙いがあるのでしょう。例えば、今年1月に虐待で亡くなった岡山市の西田真愛さん(当時6歳)の悲劇が挙げられます。真愛さんが広島市に住んでいた頃は、市内の児童相談所が見守ってきましたが、引っ越し先である岡山市の児童相談所に引き継がれることはなく、結果として虐待が続いて亡くなってしまったのです。現行の民法上では子への暴力は懲戒権によって正当化されがちです。そのため、児童相談所側から踏み込むことは難しいものがあります。今回懲戒権が削除されることで、児童相談所が以前より積極的に家庭内暴力に対応できるようになるかもしれません。
海外では子どもへの暴言や暴力は厳しく排除されているようです。アメリカ在住でニューヨーク州立大学に通うアメリカ人の友人によると、幼いときに親から暴力的なしつけを受けたことはなく、一般的なのは外出を禁止されることだそうです。体罰を身の回りで見たことがなく、もし出逢ったら警察に通報するかもしれないとのことでした。また、筆者が幼少期に受けていたしつけを話すと、唖然として、カルチャーショックを受けたと言っていました。
日本も海外のようなしつけ方針にシフトしていくのかもしれません。しかし、それで子育てがうまくいくのか、筆者は甚だ疑問です。してはいけないことをしたときに、誰かから厳しく指導されないとそれが後を引き、将来の大失敗につながるということもあるでしょう。
肝心なのは親と子の信頼関係のような気がします。しっかりと信じあえるならば、多少ひっぱたかれたところで、素直に反省し次に活かすでしょう。継続的に理不尽な暴力や口撃をする児童虐待は当然厳しく制限されるべきですが、ある程度の懲戒は必要ではないでしょうか。どこからが虐待で、どこまでは大丈夫なのか、線引きは難しいですが懲戒権そのものの削除には疑問を覚えます。
参考記事
読売新聞オンライン 2月28日付 「子ども4人の「優しい母」、男と出会って変貌…娘への虐待止める様子なく」
https://www.yomiuri.co.jp/national/20220227-OYT1T50217/3/
読売新聞オンライン 10月14日付「「嫡出推定」見直し、親の「懲戒権」削除…民法改正案を閣議決定」
https://www.yomiuri.co.jp/politics/20221014-OYT1T50163/
参考資料
子どもすこやかサポートネット 親の子どもに対する懲戒権について
https://www.kodomosukoyaka.net/research/chokai.html
民法(親子法制)部会資料 懲戒権に関する規定の見直しについての検討
https://www.moj.go.jp/content/001314369.pdf