世界的な人気を誇る韓国のアイドルグループBTSが15日に韓国・釜山で無料コンサートを開きました。メンバーのJINさんが兵役に就くまでの期間が迫っており、これから当分メンバー揃っての公演が難しくなると言われるなかでの開催でした。
日本にはない徴兵制度。韓国では、30歳の誕生日を迎えるまでに兵役に参加しなければなりません。北朝鮮との休戦中の韓国にとって、兵役は欠かせません。しかし、若者の中には、様々な理由から兵役にあまり乗り気ではない人もいるそうです。留学先で出会った韓国人の男性に兵役についてお話を伺いました。
◆韓国の徴兵制度とは
韓国では男性は19歳を迎える年に徴兵検査を受ける。検査結果によって7等級に区分され、原則として1〜4級に判定されると兵役が義務づけられる。兵役の期間は陸軍は21カ月、海軍は23カ月、空軍は24カ月。(2014年06月24日 朝日新聞朝刊)
◆体罰、いじめ、キャリアの阻害・・・
韓国の兵役中のいじめや体罰の問題があります。複数の男子が同じ部屋で過ごさなければなりません。人間ですから当然性格的に合わない人も出てきます。職場や学校とは違って四六時中顔を合わせていなければならなかったり、普段から戦闘の訓練をしていたりすることから、トラブルも起こりやすいといえます。昔の過酷さに比べると、環境はだいぶ改善されてきているようですが、それでも何が起こるか分からない怖さがあるようです。韓国の兵役での実体験をもとにしたNetflixで配信されている韓国ドラマ「D.P-脱走兵追跡官」でも、兵士のいじめやパワハラ、自殺などが描かれていることからその過酷さが分かります。
また、キャリアを阻害される可能性もあります。兵役のために、ほとんどの人は仕事を辞めてまた新たな仕事を探さなくてはならないそうです。たとえ仕事の最盛期であったとしても、兵役に行くために仕事を辞めざるを得ないのです。
◆免除規定
しかし、この兵役にもいくつかの免除規定が設けられています。たとえば、性別適合手術を受けた者や1年6カ月以上の懲役に課せられた者、北朝鮮から移住してきた者、孤児、帰化者などは兵役から免除されます。
また、「スポーツや芸術の分野で世界的な活躍をし、国の評価を高めた人」も免除の対象となります。具体的には、国際大会においてメダルを獲得したスポーツマンは「国際大会における国家の威信を高める」という理由で兵役を免除されています。たしかに、オリンピック選手は大会の開催頻度が少ないことから、若いうちに結果を残すことが特に重要になってくる分野です。この規定は、クラシック音楽の政府が指定する主要な国際コンクールにも適用されます。
しかし、ここで問題となるのは、「国の評価を高めた人」の基準の曖昧性です。BTSが韓国の経済に大きく貢献したことは言うまでもありません。ただ、現時点において芸術分野の対象にBTSのような大衆芸能は含まれていません。また、もしBTSの兵役免除を例外として認めてしまうと、他の男性アイドルグループとのすみ分けが難しくなります。世界的に知られている韓国アーティストはBTS以外にもいます。一つの例外を認めることで、後から続々と他の例外が出てくる可能性もあります。
スポーツや芸術に限らずとも、世界的な功績を残している人は多くいます。その方々のキャリアは関係ないのでしょうか。このような曖昧なルールを放置しているままでは、火種がくすぶり続けるだけでしょう。
参考記事:
16日付 読売新聞オンライン「年末に兵役入隊期限、BTSコンサートに5万人熱狂…日本からの女性「7人そろった姿を見られ幸せ」」
15日付 朝日新聞デジタル「BTSは兵役に行く?「ウ・ヨンウ弁護士」一場面を入り口に知る現状」
参考文献:
Park Moo-jong, 2018. Exemption from Korean military service [online]
兵役処分基準 – 兵役試験 – 兵役実施ガイド – 兵役行政 (mma.go.kr)