通信制大学もありだったかも 通信・通学両方経験して思うこと

今月から筆者は「放送大学」に籍を置き、少しずつ学習を進めています。今回は、通信制の大学はどんなものなのか、一度通制の大学を卒業した私の視点で紹介したいと思います。

 

■通信制大学とは

通信制大学とは、働きながら学びたいといった、キャンパスへ通えない人の学習ニーズに応えて創られた教育の仕組みです。

学習スタイルは教科書とスクーリングが中心です。スクーリングとは一定回数または一定期間大学に通学して授業を受ける面接授業のことです。また、最近ではインターネットや衛星放送を使って、分かりやすく双方向的な授業を展開する大学が出てきました。(サイバー大学ホームページより)

放送大学では、入学後に届く印刷教材を読み進めながら、テレビやラジオなどで提供される映像・音声授業で学習を進める「放送授業」が多くあります。これらはオンラインでも配信されているため、ネット環境が整っていればいつでもどこでも受講できます。他にも、全国にある学習センターで講師から直接学んだり、仲間と学び合ったりできる面接授業(スクーリング)や、リアルタイムで受講するライブWeb授業など、さまざまな形態が用意されています。

大学卒業を目指す全科履修生であれば、最長10年在籍することができ、自分のペースで進めることができるため、仕事や育児をしながら通う人も少なくありません。自分で学習管理をしなければならないために、卒業率が低いデメリットはありますが、それでもなお常時20万人以上が学んでいるようです。

 

■実際に入学してみて感じる魅力

まず嬉しいのは、授業料や入学料の安さです。筆者がかつて所属していた私立の南山大学法学部や一般的な国立大学と比べてみるとその差は歴然です。

私立大学の約5分の1、国立大学の約3分の1で、大学卒業の資格を得ることができます。私は学費のために奨学金を借りており、ちょうどこれから12年間、返済をし続けなければなりません。70万円なら奨学金を借りずとも、アルバイトで稼いだお金や親の援助のみで卒業する道が開けそうです。

また、現在受けている授業は1コマ45分×15週。1.5倍速で再生すれば、一コマ30分で視聴は完了します。ラジオ科目でしたら音声さえ聞ければ良いですから、移動時間やちょっとした隙間時間に楽しむことも可能です。実際、30分なら少し長めのYouTubeと同じ感覚なので、気軽に視聴できます。働きながら学べる最大の理由はここにあります。

受けてみて感じるのは、授業の質の高さです。かつて受けた、チョーク片手に教授が絶え間なく話し続ける授業とは違い、テレビ番組のような雰囲気。私の受けている「財政と現代の経済社会」という授業では、導入に国会や予算委員会の映像が流れ、財政の果たす役割、イメージが直感的に理解でき、普段見ているニュースと結びつきます。授業につかう図表や説明図も、素人のスライドとは違って非常に見やすいです。

▲テレビ番組と同じようなスタジオ。ゲストを呼ぶ回や、資料映像として現場でのインタビューが流れる回も。

▲放送大学「グローバル経済史」の授業の一場面。放送大学YouTubeチャンネルより。

映像授業はBS放送で一般の方も視聴できます。映像制作のプロの手によって様々な工夫が施された、授業というより映像作品に近いものになっています。中には、アメリカ人のキリスト教への信仰心の強さを視聴者が実感できるよう、ケンタッキー州にある、ノアの方舟の前で教授がロケーション撮影している場面からスタートする授業もありました。

個人的に大きな魅力だと思うのは、自分の履修する授業以外でも、ほとんどをオンラインで受講できるところです。履修登録をしていないものは印刷教材もなく、単位も認定されませんが、見るだけでも十分に楽しめるものばかりです。法学・政治学・経済学などの社会科学系、教育学・哲学・歴史学・文学などの人文科学系、データサイエンス・宇宙科学・エネルギー・生物・数理などの自然科学系と開講科目は多岐にわたります。

ただ、法学の分野を例にとると、かつて専攻していた身からすると広く浅い印象があります。特定の分野を深くがっつり学びたい方には不向きな部分もあるかもしれません。リカレント教育としての大学という役割も担っているため、教養を広く身につけたい人にはもってこいの学び場だと思います。

▲放送大学の授業科目案内冊子。付箋を貼ったのは筆者の気になる授業たち。興味深く魅力的な授業が多く、迷ってしまう。

■新たな選択肢として

通学制と通信制、どちらも経験してみて思うのは、大学でやりたいことを明確にして選択肢を広く捉えれば、経済的な負担が軽くなり、かつ濃い学びの時間を過ごせるのではないか、ということです。

通学制の大学でも、大教室の講義ならばほとんどが一方通行の授業でした。通信制と比べた時のメリットは、教授と距離が近いこと。オンラインになったとしても、リアルタイムで質問を送れることで、それが授業に反映されることだと思います。授業後やオフィスアワーに研究室を訪れて、わからないことをとことん聞く。そういった贅沢な形で学びを深められるのは、通学制ならではでしょう。また、一つのキャンパスに同じ分野の教員がたくさん集まっていて、特定の学問をより深く学ぶことができるというのも魅力でしょう。

しかしそのメリットを享受するつもりがないのであれば、通信制にした方が、より充実した学生生活を送れるかもしれません。行動を起こしさえすれば、インカレサークルに入会して学生の仲間を作ることは可能ですし、浮いた学費を他の資格取得のために回すことだってできます。難関大学に入学したという肩書きがあった方が有利だと思うのなら、しばらく大学に通った後に通信制に編入するのはどうでしょう。節約できた通学時間の分、社会経験を積むこともできます。また、通信制でも、スクーリングが多ければ教授との時間をより長く取ることができますから、浅い学びで終わる懸念も払拭できるかもしれません。

インターネット技術の発達によって、学びの選択肢はどんどん広がっています。自分のやりたいことに向き合えば、意外と良い新たな選択肢が見えてくるかもしれません。広い視野を持って考えてみてはいかがでしょう。