素人将棋ファンが勝手に解説第2弾！　人物像から見る竜王戦

本日から第35期竜王戦が始まった。前人未到の八冠達成を目指す藤井竜王にとっては、落とすことのできないタイトル戦だ。竜王戦に関する基本的な情報に関しては前回の記事(素人将棋ファンが勝手に解説！　竜王戦のあれこれ | あらたにす (allatanys.jp))で紹介したので、是非合わせて読んでみてほしい。今回は少し踏み込んで両対局者に焦点を当てて話していきたい。

―挑戦者　広瀬章人八段―

・プロフィール

現役棋士183人(10月7日執筆時点)の内、最上位のA級に属する10人の棋士のひとり。早稲田大学在学中に自身初となる王位を獲得。2018年にはタイトル100期がかかる羽生善治九段を破って竜王に。タイトル通算2期の実力者。

・キャラクター

おおらかな人柄から「鷹揚流」と呼ばれることも。竜王戦への意気込みを聞かれると「一応、頑張ります」だった。読売オンライン動画の竜王戦開幕特集の動画(広瀬八段の素顔に迫る特集動画「マニアックトーク」、藤井竜王へのジャブも : 読売新聞オンライン (yomiuri.co.jp))では、事前に藤井竜王が語った「本選展望」で自分の名前が挙がってなかったことに対して、「ははは、そりゃそうじゃないですかね、全然最近パッとしてなかったのでノーマークだったと思います」と自虐回答。こうしたつかみどころのなさも魅力の一つだ。

・エピソード

広瀬八段と藤井竜王にはちょっとした因縁がある。詰将棋解答選手権という詰将棋をいかに早く解くかを競う大会がある。広瀬八段は詰将棋が得意なのだが、仲の良い棋士から結果を聞かれると「子供に負けました、ははは」と笑っていたそう。この子供というのがのちの藤井竜王。今回の竜王戦ではその「藤井少年」に広瀬八段が挑戦する形に。まるでドラマのような話である。

竜王を獲得した4年前とは違い、広瀬八段は一児のパパとなった。「家族のために頑張る…ようにはしています。」広瀬八段らしさは相変わらずだが、闘志がうかがえる。先ほど「鷹揚流」と紹介したが、もちろんゆったりとしているだけではなく、きちんと爪を磨いて、来るべき時を待っている。切れ味抜群の将棋を見せてくれることに期待したい。

―竜王　藤井聡太―

・プロフィール

史上最年少となる14歳2か月でのプロ入りに始まり、デビュー以来破竹の勢いでの29連勝。残した記録は書ききれないほど。現在は8つのタイトルの内、最高峰の竜王を含む五冠で頂点に君臨する。

・キャラクター

記者会見での落ち着いた雰囲気や対局直後のインタビューでの口ぶりから、真面目で成熟しきった好青年のイメージが強いと思う。もちろん、基本的には間違っていないが、案外お茶目な一面も多いように感じる。王将戦直前の毎日新聞のインタビュー(藤井聡太竜王　挑戦する渡辺明王将に「ここだけは負けない」点は? – 毎日動画 (mainichi.jp))で、渡辺明名人(当時王将)が「藤井さんに勝っているのは歳だ」というのに対して、藤井竜王が勝っているところはどこかと聞かれると「難しいですね、いや若さですかね(笑)」と楽しげに答えているのが印象的だった。ぜひこれから藤井竜王をニュースで見る時は、お茶目な瞬間がないか探してみてほしい。

・エピソード

記録になるが、過去のタイトル戦は10戦10勝。竜王戦に限っても、予選などを含めた40戦のうち負けたのは4回だけ。勝率は恐怖の9割である。また、「実質五番勝負」ということも囁かれている。保持する竜王戦や王位戦、王将戦は七番勝負なのだが、あまりに強すぎて悪くても1回しか負けないため、5局で決着がついてしまう。このためこう言われるようになった。今回の竜王戦はいったい何局に及ぶのか楽しみである。

今まで竜王戦は数々のドラマを生んできた。藤井竜王のデビュー戦も竜王戦ランキング戦6組(1から6組の内)。当時最年長の加藤一二三九段(76)と62歳差対決が話題になった。確かにここから伝説は始まった。今回の竜王戦では深淵な81マスの盤上にどんな物語を紡いでくれるのだろう。ファンとして、この瞬間に立ち会えていることを本当に嬉しく思う。