日本の音楽シーンは変わるか

昨年11月、2組のボーイズグループがメジャーデビューを果たしました。なにわ男子とBE:FIRSTです。共通点は、どちらもプロデューサーが現役のアーティストであるという点です。なにわ男子は関ジャニ∞の大倉忠義さん、BE:FIRSTは現在活動休止中のAAAのメンバーであり、ラッパーとしても活動するSKY-HIさんです。

2人が目指すグループの形は大きく異なります。

大倉さんは未熟ながらも成長していく過程にアイドルとしての魅力を見出しました。なにわ男子は既存の男性アイドルとは異なる「かわいさ」を前面に出すことで女性の人気はもちろん、男性のファンも獲得しています。

SKY-HIさんは歌やダンスのクオリティやクリエイティビティを追い求め、BE:FIRSTはメンバー全員の高い歌唱力と世界大会で1位を獲得したことがあるメンバーを中心とした魅せるダンスでデビュー直後から高い評価を受けているだけでなく、各種チャートでも好成績を残しています。

しかし、一見正反対に見える2人のプロデュースの姿勢には、共通点がありました。才能が埋もれ、また、見つかった才能が消費されてしまう状況に問題意識を持っていることです。

数年ほど前から、ダンスボーカルグループのトレンドは完全に韓国に移りました。日本国内のランキングや音楽番組におけるK-POPアイドルの存在感も高まる一方です。K-POPがJ-POPを圧倒する状況が続けば、日本から有力なダンスボーカルグループが出てこなくなり、才能を持つ若者が日本で活躍する機会も減っていくかもしれません。

日本に才能を持った人がいないわけではなく、評価されないまま、埋もれてしまっているのが問題なのです。SKY-HIさんは、エッセイ『晴れるまで踊ろう』の中で「日本の芸能システムは、いったい何人のG-DRAGONになれたかもしれない才能を殺してきたんだろう」と語っています。

また、デビューすることができたとしても、望まない消費のされ方に疲弊し、潰れてしまう例が多いことも既存の音楽業界の問題です。アーティストやアイドルは、音楽やパフォーマンスだけでなく、容姿や性格、愛嬌など自らが見せたい部分とは異なる部分にも注目が集まります。

このような状況は、芸能人でない私たちには想像が難しいものですが、2人は、自らダンスボーカルグループのメンバーとして活動し、直接体験してきたからこそ、その苦しみや葛藤を理解し、プロデュースするグループのメンバーとのコミュニケーションやメンタルケアを大事にしています。

J-POPは衰退したと言われるなか、既存のシステムの問題点を見抜き、それぞれの形で自らの経験を生かしたプロデュースに取り組む2人。日本の音楽シーンを変えるきっかけになるのではないでしょうか。

 

参考

9月1日付 読売新聞オンライン 「NHK『クロ現』異例のアイドル特集に反響『なにわ男子』プロデュースする関ジャニ・大倉忠義の思いに『号泣した』」

4月14日付 朝日新聞社 好書好日Good Life with Books 「『晴れるまで踊ろう』SKY-HIさんインタビュー 自分のままで、夢に向かって一段ずつ」

1月8日付 読売新聞オンライン 「BE:FIRST結成へ1億円出資したラッパー…『獣道にアスファルトかけ、舗装したい』」

 

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