2016年は中東諸国の国交断絶から始まる波乱の幕開けでした。中東情勢がどう展開していくのか、今年も国際問題の焦点は中東にあり、という印象を受けました。しかし、昨日、こちらにも目を向けてほしいと言わんばかりに、北朝鮮が4回目の核実験を行いました。隣国の暴走ぶりに背筋が寒くなります。
北朝鮮は6日、朝鮮中央テレビを通じて「水素爆弾実験を実施した」と発表しました。本当に水爆かどうかは定かではなく、各国は懐疑的な見方を示しています。ただ北朝鮮の発表が事実だとすれば、水爆実験は初めてとなります。今まで核実験の前には、弾道ミサイルの発射やアメリカ、中国への事前通告などの予兆がありました。しかし今回はいきなりの強行実施です。
各国は相次いで北朝鮮を厳しく非難しています。安倍首相は「国連安保理の権威に対する重大な挑戦だ。北朝鮮との対話を通じた問題解決に向けた動きにも逆行する。厳重に抗議し、断固として非難する」と述べました。韓国の朴槿恵大統領は、「世界平和と安定への全面的な挑戦だ。必ず相応の代価を払わせねばならない」と強く非難。米国家安全保障会議の報道官は、「いかなる国連安保理決議違反も非難する。全ての挑発に適切に対応する」としました。
北朝鮮の最大の後ろ盾と言われる中国でも「非核の約束を忠実に守り、情勢を悪化させるいかなる行為も停止するよう極めて強く促す」と牽制しています。さらに安全保障理事会は日本時間7日午前1時すぎから緊急の会合を開きました。制裁の強化に向けて協議が始まるでしょう。
今回の核実験は自らを孤立させるだけの行為です。昨年末から金正恩外交が迷走していると報じられていました。北朝鮮の音楽グループ「モランボン楽団」は、昨年末に北京で初の海外公演を行う予定でした。外交の一手として派遣された楽団ですが、リハーサルまでしたものの、公演を行わないまま突然帰国しました。この直後に、金正恩第一書記が水爆実験の命令を下したものと思われます。北朝鮮の最大の貿易相手国である中国がどこまで突き放すことができるのかに注目が集まります。
2014年に北朝鮮が拉致被害者らの再調査を約束したことに伴い、日本は独自に課してきた制裁の一部を解除しています。再調査を約束したことを受けたものですが、肝心の報告は先送りされたままです。これを踏まえて、解除項目の復活やさらなる強化など、厳しい対応をするべきです。
参考記事:
7日付各紙朝刊 北朝鮮核実験関連面