私のまち、東京

♪楽し都 恋の都

夢の楽園(パラダイス)よ 花の東京

1936年に発売された昭和歌謡曲「東京ラプソディ」の一節です。ご存知ですか。私の中学は神田にあり、運動会の時、全学年でこの曲に合わせて踊ることになっていました。ダンスが下手な私は、苦い記憶と共によく覚えています。銀座や神田、新宿が歌詞に出てくる曲をその地で踊ることに同級生は誇りを持っていました。

東京がどのように歌われているのか―。1946年から2014年までにヒットした約5千曲を対象にした分析が紹介されていました。戦後復興に向けた明るい東京を歌い上げ、集団就職世代になってからは故郷に焦がれ、そして都会への憧れが歌詞になる。時代によって表情をかえていった東京が見えてきます。

Jポップの歌詞から若者文化を研究している阿部真大准教授は「歌における東京の優位性は90年代で消えた」と述べています。これは長い景気低迷やインターネットの普及によって東京が特別な場所ではなくなったことも影響しているそうです。「木綿のハンカチーフ」(1975年)を生み出した作曲家の松本隆さんも「東京を歌にすることは難しくなった」と語ります。そして、松本さんはネットで分かることは現実の何万分の1でしかなく、東京らしさがある場所をどれだけ残せるかが課題だと指摘しています。

私の東京の景色は言うまでもなく、神田祭。東京の神田明神で行われる祭りです。日本の三大祭の一つであり、江戸三大祭の一つともされています。粋で華やかな日本橋からアニメや電気街で有名な秋葉原を通り神田明神へ。神輿を担ぎながら、東京という街そして、神田っ子の息遣いを肌で感じていました。都会的な部分もあるけれど、どこか懐かしさがあります。

箱根駅伝のスタート地点は大手町・読売新聞社です。本社前にある花壇にはパンジー、ビオラ、シロタエギクなどきれいな花が植えられています。「絆」という花言葉をもつシクラメンもありました。ビルに囲まれた大手町を飛び出し、明日には日本橋を渡って戻ってきます。花言葉のように襷をつないでいきます。選手達の汗と涙もこの街の顔の一つです。

私にとってこの街は決して無機質な都会ではありません。人の行き交うドラマが詰まった東京を残していきたいものです。

 

参考記事:1日付 朝日新聞朝刊東京14版 第2東京 28面 「ヒット曲5千曲分析で見えた「東京」」