素人将棋ファンが勝手に解説! 竜王戦のあれこれ

23日付の読売新聞の朝刊をめくっていて、「おぉ!」と思わず声をあげてしまいました。それは参院選公示の翌日ということもあり、選挙についての多くの記事が紙面を埋める中、わざわざ見開きで竜王戦35期の特別面が展開されていたからです。そこで今回は、棋力はイマイチでも将棋愛はピカイチ(自称)の素人将棋ファンである筆者が、竜王戦のあれこれを勝手に解説したいと思います。

-竜王戦とは-

まずそもそも、将棋を知らない人からすると「竜王戦」とは何ぞやというところから始まると思います。将棋界にある8大タイトルの1つで、最も序列の高いタイトルとされています。歴史は名人戦の次に古く、1950年から始まった九段戦が1962年に名称が変わり十段戦に、1988年から現在の竜王戦という形になりました。永世七冠の資格を持つ羽生善治九段が19歳で初めて獲得したタイトルとしても有名です。また、ここ最近は行われていませんが海外対局でも知られていて、例えば将棋ファンなら誰しもが知る初代永世竜王の称号をかけた第21期竜王戦、渡辺明竜王対羽生善治名人の第1局はフランス・パリでの対局でした。長々と話しましたがここでは、「竜王戦は序列の最も高いタイトル戦」ということを覚えておいてください。

-意外と知られていない賞金と対局料-

ではなぜ最も序列が高いのか。実は賞金や対局料と密接な関係にあります。タイトル戦の序列は契約金によって決まります。ここでいう契約金というのが、賞金や対局料など日本将棋連盟に支払われる総額を指します。竜王戦は他棋戦とは比べ物にならないほど高額です。アメリカンドリームならぬ竜王ドリームと言われるほどです。なんと優勝者には4400万円、敗者にも1650万円が支払われます。将棋を知らない友達にこの話をすると毎回、「負けてもそんなに貰えるの?」と驚かれます。

ただ、これだけでは終わりません。負けるより前、つまりタイトル戦挑戦が決まるまでにも1000万円以上が配分されます。例えば去年の藤井聡太三冠(挑戦当時)はランキング戦という予選で優勝、その時の賞金が366万円、決勝トーナメントでの対局料が2局で271万円、挑戦者を決める挑戦者決定三番勝負の対局料が460万円、合計1097万円を獲得した状態で最後の決戦が始まるというわけです。もちろん、これだけ貰えるのはごく限られた強豪だけですが、竜王戦の規模の大きさが少しは伝わったかと思います。

-第35期の見どころ-

ここまで読んでいただき少しでも竜王戦に興味を持ってもらえた皆さんに、今期の竜王戦の注目株3人をご紹介します。1人目は藤井藤井竜王の唯一の研究仲間である永瀬王座です。将棋界トップクラスのストイックさで知られる永瀬王座。あまりの謹厳実直さからついたあだ名が「軍曹」。将棋界には様々な天才がいますが、彼は間違いなく努力の天才。「将棋に才能は要らない。必要なのは努力のみ」と公言するほど。永瀬将棋の持ち味は人を狂わせると言われるほどの粘り強さです。

2人目は同期の大橋六段です。公式戦では藤井竜王相手に4連勝。藤井竜王に勝ち越している数少ない棋士で、藤井キラーの異名を持ちます。色鮮やかなカラースーツがトレードマーク。優れた新手や新構想に送られる升田幸三賞を輝龍四間飛車で受賞しています。独創的なオールラウンダープレイヤーといえます。

3人目は藤井竜王と同い年の19歳で最年少棋士の伊藤五段です。昨年度は新人王獲得に加え、藤井竜王を差し置いて勝率1位。たっくんのかわいい愛称とは裏腹に、19歳には見えない落ち着きと完成度の高い将棋が魅力です。

 

読む前に比べて竜王戦への理解は深まったでしょうか。あまり藤井竜王以外の棋士がニュースになることはありませんが、今回の本選には研究仲間や同世代、同期生が残っており目が離せないシリーズになっています。将棋の中身から入るのは確かに難しくハードルが高いですが、バトル漫画のように人物ごとの特徴に着目しても面白いし、対局の合間に摂る「勝負メシ」を自分も食べてみるなど楽しみ方は色々です。一人でも多くの人が自分なりの楽しみ方で将棋に興味を持ってくれたらうれしく思います。

 

参考記事:

 

23日付 読売新聞朝刊 (神奈川12版) 14,15面(特別面) 「挑戦権 永瀬王座が本命 「対抗」大橋六段ら3人予想」