厚生労働省が3日に発表した昨年の国内の出生数は81万1604人。一人の女性が生涯に生む子どもの数である合計特殊出生率は1.30でした。1.5を下回れば超少子化水準にあたるとされます。日本の少子高齢化は数字にも如実に表れています。
少子高齢化の影響を受けているものは、少なくありません。そのなかに、中小企業の後継者問題があります。東京商工リサーチの調査によると、「後継者難」が理由で倒産した負債1000万円超の企業は404件でした。調査を始めた2013年以来で最多だといいます。
更に、興味深いデータもみつかりました。東京商工リサーチによる20年の休廃業・解散企業動向調査によれば、休廃業や解散を選択する代表者の年齢は、「70 歳代」が最も多く 41.8%。70 歳代以上が全体に占める割合は年々増加傾向にあり、59.8%となっています。
白書によると、そのうちの6割ほどは純利益が黒字なのに廃業を決意しているのです。経営者自身が事業を続ける意向がないことから「廃業」を選択する。つまり、業績が振るわずやむなく会社をたたむというよりも、高齢である社長さん自ら廃業を決めるケースが少なくないということになります。
このような状態を打開するためには、どんな対策が必要なのか。筆者はやはり、買収や統合つまりM&Aという選択肢がより周知される必要があるかと思います。
東京商工リサーチによれば、中小企業の経営者が後継ぎと考える相手は親族が61.5%で一位。次いで役員従業員が25%を占めます。しかし、白書によると同族承継の割合は 34%にとどまり、必ずしも希望通りにバトンタッチできるとは限らない現実があります。
後継ぎを自分の子どもと思い込んでいる場合、当人に「自分は引き継ぎたくない」と言われればそこで終わりではないでしょうか。
一方、M&Aのマッチングがより当たり前になれば、後継者候補の数は全国規模に広がり、経営のバトンが渡される確率は高まります。さらに事業を受け継いだ企業の成長率は、同業種よりも1.2%高くなるというデータも発表されており、39歳以下の経営者ではより高い成長率をあげています。
会社の代表がM&Aを敬遠する理由として、27%が「良いイメージを持っていない」と回答しています。ですが、中小企業の場合はほとんどが友好的な株式譲渡の形をとっています。一般にイメージする「悪い買収」は有無を言わせない乗っ取りです。そのようなものはほとんどなく、基本は「技術」「事業内容」に関心を持ち協議を重ねた結果の円満な買収なのです。子会社として取り込み、看板ごと事業を引き継ぐケースも少なくありません。
政府も、中小企業の事業引き継ぎを支援する「アトツギ支援ネットワーク(仮称)」を年内に創設するといいます。会社日本の競争力の足腰を支え、雇用の場を提供してきた中小企業で、無用な不安を持つことなく前向きな会社の引継ぎが広がっていけばと思います。
【参考記事】
6月5日付 読売新聞朝刊 1面 中小企業承継後も支援