基地問題 若者世代の実感は

515日、沖縄は復帰50年を迎えました。玉城デニー知事の決意表明、若者のスピーチなど印象深いニュースが並びます。

一方で、気になる数字を目にしました。沖縄に日本全体の基地の70%が集中していることは差別的かという設問に対して、「そう思う」と回答した人は60代が57%、70代以上は63%に上ったが、10~30代は24~27%にとどまったといいます。

これは、沖縄県が昨年実施した県民意識調査の結果で、計5000人を対象に調査を行ったようです。世代間のギャップが浮き彫りとなる形になりました。

筆者は、この調査結果に少し納得する感覚を覚えました。今でこそ基地問題は解決するべき課題ばかりだと考えていますが、2年前には「そう思わない」と答える人の気持ちに近い立場だったからです。

自身が住む地域の近くには、横田基地があります。ミントグリーンのポップなカフェやアメリカンダイニングの店が基地沿いに並んでいます。リトルアメリカというイメージで、ディズニーの世界のような異国情緒ある景観からオシャレなスポットでしかありませんでした。

さらに横田基地へ好印象を持っていた背景には、日米友好祭の存在があります。日本では購入できないスターバックスの限定ボトルや分厚いステーキ、アメリカ製のスナックが手に入り、基地の構内を堪能できる一大イベントです。例年、2日間で十数万人が訪れます。実際に2019年の友好祭の写真を見ると、家族連れから友人同士などさまざまな層が訪れています。

購入したスターバックスのパッケージ 他にもアメリカ製スナックなどが販売されていた

周りも、横田基地に対して身近にアメリカを感じられる場所というイメージを抱く人ばかりで、騒音の被害や危険性を正面から口に出す人はあまりいませんでした。

ですが、今は「基地」というものが集中している地域は極めて厳しい環境にあるとはっきりわかります。多くの情報に触れたことで認識が変化したからです。以前は、ただ米軍基地は「存在しているもの」という意識でした。新聞報道や特集記事を検討すると、基地は「危険を伴いながら存在している」という認識に変わります。

騒音問題は、うるさいだけでなく子供たちの授業を妨げ、集中力の低下を引き起こします。沖縄の水道水に、米軍基地から流出した物質が検出されたという事実は日常が損なわれていることを浮き彫りにしています。

住んでいるだけで、被害をこうむる。そのような状態がただ沖縄県というだけで集中しているのならば、やはり解決すべき不平等な状態です。

筆者の住む地域に関係する横田基地も例外ではありません。2018年から19年にかけて、特殊作戦機CV22オスプレイが機関銃を住宅街に対してむき出しにしたまま走行する姿が40回も確認されています。

執筆中の今も所沢市の上空を低空飛行の軍用機が通り過ぎました。他地域の青森県米軍三沢基地では、F16戦闘機が投棄した燃料タンクの一つが街に落下し、一歩間違えれば大惨事になりかねなかったといいます。

北朝鮮から連日発射されるミサイル、中国の海警の動きなど不安定なアジア情勢を踏まえれば、基地の重要性は充分に認識できます。ですが、だからといって基地の問題に目を瞑るというわけにはいきません。より安全性を高めながらの基地運営は可能なはずです。

基地の近くでどれほど危険なことが起きているか、当たり前の日常生活が損なわれていないか。こういったニュースは、やはり自ら取り込んでいかねば知る機会は少ないと感じます。

戦後史なるものを教科書で学び、身近な課題をどこか遠くのものに感じがちに思う世代が増えるからこそ、「なぜ基地問題は考えるべき課題か」ということを、身近にある危険性も踏まえて主体的に学ぶ時間がもっとあってもいいと思います。

【参考記事】

5月16日付 読売新聞朝刊 東京13版 1面 沖縄復帰50年

5月16日付 朝日新聞朝刊 東京14版 1面 50年 「平和の島」達成されず

5月16日付 日本経済新聞朝刊 東京13版 1面 沖縄復帰50年

【参考資料】

時事ドットコム 基地問題 世代間に温度差 若者は現状容認