クローズアップ現代、その後は?

先月物議を醸したNHKの報道番組「クローズアップ現代」の問題。昨日BPO(放送倫理・番組向上機構)の放送人権委員会が、「番組は人権侵害にはあたらない」ものの、「放送倫理上は重大な問題があった」とし、「報道番組の取材・制作において放送倫理の順守をさらに徹底する」ように求める勧告をNHKに示しました。

 

問題になったのは、昨年5月に放送された「追跡“出家詐欺”~狙われる宗教法人~」。詐欺ブローカーと紹介された男性が「自分はブローカーではなく、ブローカーであると言った覚えもない。(ぼかしがかかっていたものの)映像も個人が特定できるものだ」と人権侵害、名誉・信用の毀損を申し立てていました。彼は「記者からブローカーを演じるように依頼された」と話しており、これに対しNHKは「短時間の打ち合わせで演技指導は済むはずがなく、男性はそれまでの知識や体験に基づき語ったはずだ」と、やらせを否定しました。しかし、こういった曖昧な情報で男性をブローカーと断定するテロップを流したという点で、BPOは「制作者が事前取材も裏づけ取材もなしに情報提供者の証言に全面的依存していた」と問題視しました。また、隠し撮りのように撮られていた映像が実はそうではなく、過剰演出であったということも判明しました。

 

やらせや過剰演出は許しがたい行為ですが、テレビというメディアにはこういう問題はつきものかと思います。この一件はたまたま明るみに出ましたが、他にも過剰演出にあたる番組が隠れている気がして仕方ありません。なによりも「1つ1つの番組が作品である」ということを念頭に置いてテレビを視聴する姿勢が大切です。

 

私も大学でドキュメンタリー番組を制作していますが、答えてほしい内容を得られるような質問を用意したり、わかりやすく見せるための演出に気を付けたり、企画意図に沿って取材編集したりしています。確かに事実に基づいた映像を作成していますが、(テレビであれば)視聴率、(私の場合は)コンクールを考慮し、より面白く見えるように編集しているということです。

あらゆる意図のもと作られているのがテレビの番組と考えたほうがいいでしょう。その情報を鵜呑みにせず、幅広いメディアから学ぶことを心がけたいものです。

 

12月12日付 読売新聞朝刊(大阪13版)35面 社会面 「NHKに倫理徹底勧告」 朝日新聞朝刊(大阪14版)36面 社会面 「過剰演出 倫理上問題」日本経済新聞朝刊(大阪12版)38面 社会面 「人権委も倫理上問題」