札幌オリンピック招致 盛り上げるために

2030年冬季オリンピック招致を目指している札幌市。筆者の出身地です。今年3月には市議会が招致を支持する決議を可決し、誘致活動が本格化していく見通しです。

オリンピックは4年に一度の夢の舞台。その舞台に立つことを目指してたゆまぬ努力を続けてきた人もいれば、選手たちの活躍を見て勇気をもらう人もいます。オリンピックが人生のターニングポイントになる場合もあるでしょう。そんな大会が自分の住む街で開催されたらどんなに素晴らしいことでしょうか。

しかし、オリンピックがもたらすのは夢と感動だけではありません。良くも悪しくも開催都市に多大な影響を及ぼします。そのため、招致に対しては賛成の声もあれば反対の声も少なくありません。

去年夏に1年の延期を経て開催された東京オリンピック。多くの日本人選手が活躍し、感動が生まれた反面、想定をはるかに上回る費用に加え施設に関する苦情、不祥事など様々な問題が浮上しました。

札幌オリンピック開催にあたっても、当然東京大会と同様に莫大な資金が必要になることでしょう。開催費用はもちろん、地下鉄等の公共施設を一新するための財政負担、そして五輪で使用した施設の維持経費などが考えられます。

なかでも五輪会場の維持が争点になる理由としては、地元のウインタースポーツ人口の少なさが挙げられます。施設があっても使う人が少ないことから維持できない状況が生まれているのです。これは誘致運動がいま一つ盛り上がりに欠ける理由の一つでもあります。

筆者は中学生の頃札幌でスピードスケートのクラブチームに所属していましたが、当時市内の中学生大会で常に1位でした。出場者がほかにいなかったからです。札幌市内唯一のスピードスケート場である真駒内セキスイハイムスタジアムは、年々営業期間が短くなり、4年前からは冬の営業を停止しています。明言されてはいませんが、札幌のスピードスケート人口があまりに少ないこともその理由の一つでしょう。競技人口が多ければ施設維持の経費も入場料等で賄えますが、人口減少の一途を辿るスポーツに関連する施設はそうもいかないのです。

そのスピードスケート競技は2030年札幌大会では北海道の別の都市で開かれる予定ですが、他の多くのウインタースポーツも同じく競技人口の減少という悩みを抱えています。それはその競技への注目度の低下につながります。これでは莫大な費用をかけてまでオリンピックを招致したいという気運も起こらないでしょう。

このままの状態で誘致活動を進めたとしても、最終的に招致に成功して開催されるのかもしれません。しかし、どうせやるなら多くの市民が納得し、心から歓迎する中で開催されて欲しいと思います。そのための一歩として、市内のウインタースポーツ人口の増加に寄与するような取り組みが求められています。

 

※真駒内セキスイハイムスタジアムのスケート営業が停止となったのは故障のためです。ただし、修理に多大な費用がかかるために営業再開の見通しが立たなくなっているのです。

 

 

参考記事:

朝日新聞デジタル 連載「2030年オリパラ 札幌招致を問う」

第1回 4月5日 札幌五輪「主役」だった施設、ならなかった施設 招致の今問う役割

第2回 4月6日 低調な札幌のウインタースポーツ実施率 五輪招致目指すのになぜ

第3回 4月7日 再開発続き「まるで東京」札幌五輪招致で加速 まちの独自性は

第4回 4月8日 陶芸のまちにスケボーで新たな風 スキー・スケボーの五輪効果は

第5回 4月9日 コロナ禍でも開発熱やまないニセコ 五輪なくても世界レベルの観光地