3月22日、文部科学省は全国の大学に対して感染対策を講じた上で対面授業を適切に行うよう求める通知を出した。
通知では、「学生生活不適応・修学意欲低下」を理由とした中退者・休学者の割合が前年度よりも増加傾向にあると指摘。オンライン授業による「学生同士や、 学生と教職員との人的交流ができていない」ことが増加の一因として対面授業の実施を求めた。
「学生生活不適応・修学意欲低下」を理由とした中退者・休学者は、前年比では10.3ポイント増、休学者1.0ポイント増であった。文科省の指摘の通り増加傾向にあるといえる。
しかし、オンライン授業が増え、人的交流が減少したことにより中退者・休学者が増加したと結論づけてよいのだろうか。なぜなら、学生数に占める中退者・休学者の割合はコロナ禍以前の2019年度の方が高いからだ。
19年度の中退者の割合は1.22%、休学者2.42%である。一方で、コロナ禍の21年度の中退者・休学者の割合は0.99%、2.17%。20年度も0.97%、2.23%である。つまり、中退者・休学者の割合はコロナ禍の20、21年度よりもコロナ禍以前の19年度が高いのだ。
学生数に占める中退者・休学者の割合(「学生の修学状況(中退者・休学者)に関する調査【令和3年12月末時点】」より作成)
文科省はオンライン授業による人的交流の減少が中退者増加の一因と考え、対面授業の実施を呼びかけている。しかし、全体の中退者・休学者の割合はコロナ禍以前と比較して低下している。中退者・休学者の増加を理由に対面授業再開を促すのは見当違いではないだろうか。
そもそも学生からのオンライン授業の評価は低くない。2021年3月に文科省が実施した調査によると、過半数の学生がオンライン授業について「満足」、「ある程度満足」と回答している。
ポストコロナの高等教育は、対面一辺倒ではなく、コロナ禍で培われた経験を活かした「ハイブリット型」を目指していくべきではないだろうか。高等教育の「あるべき姿」は、対面授業に限らないはずだ。
参考資料:
読売新聞オンライン「文科省、全国の大学に対面授業求める」
文部科学省「新型コロナウイルス感染症の影響による学生等の 学生生活に関する調査(結果)」
同上「令和4年度の大学等における学修者本位の授業の実施と新型コロナウイルス感染症への対策の徹底等に係る留意事項について(周知)」
同上「学生の修学状況(中退者・休学者)に関する調査【令和3年12月末時点】」
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私事ですが今月末であらたにすを卒業します。
取材に協力していただいた皆さま、読者の皆さま、関係者の皆さま、ありがとうございました。