仲良くは簡単ではない

同時多発テロ事件から2週間となる11月27日、フランス政府が主催する追悼式がパリで開かれました。2千人以上が招かれ、事件でけがをした被害者らも参列しました。追悼式典ではどんな歌が歌われていたのか調べると、「愛しかない時(Quand On n’a Que l’Amour)」がその一つでした。

これは1956年にフランスでヒットしたものです。ジャック・ロマン・ジョルジュ・ブレルという人が作曲・作詞をしています。彼はベルギーで生まれフランスで成功した人でもあります。今回のテロの実行犯に、ベルギーで生まれ育った若者たちも含まれていました。計画するのではなく仲良くしよう。この曲が選ばれたことには、そのような意味が込められているのではないかと考えてしまいます。

しかし、私が願うように仲良くすることは簡単でない現実があります。そのことを今朝の記事で考えさせられました。多様な文化の共生を掲げてきた欧州で、外からは見えにくい分裂が広がっているそうです。特に、自国の文化伝統への同化を移民に強いるフランスはそのように言えるかもしれません。住んでいる地域にどうしても馴染めない、お互いの類似点より相違点のほうが目に入ってしまう。異文化に溶け込むのはなかなかジャック・ブレルのようにうまくいきません。

様々な背景を持った個人が同じ地域社会に住むことには、これからの日本にも当てはまるでしょう。記事によると日本に暮らす外国人は過去最多の約217万人。朝日新聞の別刷特集「GLOBE」ではフィリピンのスーパーメイドが日本に来春、やってくることが紹介されています。外国人家事労働者の受け入れを特区で認める法律が7月に成立したからです。特区には神奈川県と大阪府が手を挙げています。外国人をどう受け入れるか。早急に考えなくてはならないでしょう。

街のつながりの一つとして、お祭りを例にあげます。伝統行事であり、日本人以外を参加させていいのか議論になることもあると聞いたことがあります。たしかに納得がいかない住民の気持ちも理解できます。しかし、そこは国籍に関係なく住民として受け入れるのが当然です。記事では街づくりを研究する岡崎広樹さんは「顔の見える関係づくりを地道にやっていくしかない」と話しています。お互いの関係性を築きあげ、異文化を理解していくことが私たちには求められています。

 

参考記事:6日付 朝日新聞朝刊 東京14版 1,2面 戦後70周年 エピローグ「多様な欧州 憎悪が分断」

6日付 朝日新聞GLOBE 別刷り「家事がなくなる日」 (G-5)