最先端ロボットにくぎ付け

ホンダが2000年に初代モデルを発表し、日本の技術力の象徴となった人型ロボット「ASIMO(アシモ)」が、今月末で表舞台から姿を消します。昨日の読売新聞朝刊では、人間さながらの動きと、見た目の親しみやすさで愛された「ASIMO」と最後の別れをする人々の様子が報じられていました。

筆者は、今月12日、「2022国際ロボット展」に足を運びました。長期インターン先である工業専門紙が主催する全国最大規模のロボット展です。小さい頃からアニメ「ドラえもん」と星新一のショートショートに触れてきた影響で、ロボットなどSFの世界には目がありません。最近では漫画「機械仕掛けの愛」に心動かされました。ロボットと人間の共存を舞台としたショートストーリーです。ブラウザで試し読みもできるので、ぜひ読んでみてください。

ところで、「人間の仕事がロボットにとって変わられる」、そんな言葉をよく耳にします。12月に執筆した記事でもロボットと人間の調和について触れました。国際ロボット展を訪れて感じたのは、既に「共存」が進んでおり、私たちの生活をより良いものにサポートしてくれているということです。

スマート農業ブースでは、国内の農業を元気づけてくれる果物や野菜の収穫用ロボットやドローン、ロボットトラクタが勢揃いしていました。農家の人手不足解消にも繋がります。

コロナ禍に持ってこいのロボットも見つけました。バイバイワールド社が手がける拍手ロボット「ビッグクラッピー」です。リアルな拍手と愉快な声掛けで集客につながる拍手が売りです。周囲には小さな子供からご年配の方まで、人だかりが出来ていました。「幸せなら手をたたこう」「手をたたきましょう」、誰しも一度は聞いたことのある童謡を歌い上げていました。口が動き、歌に合わせて拍手をします。店頭やイベントでの客寄せとして低コストで使えます。今月に静岡県に旅行をした友人も、観光地「三島スカイウォーク」で一際目立つ存在だったと話します。

ビッグクラッピー(12日筆者撮影)

三島スカイウォークにて(友人提供写真)

コロナ禍によるインバウンド観光の消失は大きな爪痕を残しました。実際、日経MJによると、あぶらとり紙の老舗「よーじや」では海外からの観光客による需要が減少した結果、売上は以前の7割減に。ブランド戦略を一から見直す事態です。「ビッグクラッピー」はコロナ禍の沈んだ景気を音声と拍手で少しでも盛り上げてくれる期待のロボットですね。

中小電機メーカーに身をやつした芸術ユニット「明和電気」のブースではロボット楽器「オタマトーン」の物販が見られました。東京医科歯科大学が、喉頭がんなどにより声を失った方の発声を補助する代用発声デバイス「人工喉頭」として活用したことも記憶に新しいところです。筆者も幼少期に親にねだって買ってもらった「オタマトーン」。今や抑揚のある声を出せる「人工喉頭」として貢献している事実に驚かされました。

オタマトーン:右(12日筆者撮影)

入り口では、ロボットベンチャーのグルーブXが手掛けた家庭用「LOVOT(ラボット)」がいました。愛くるしい表情やしぐさ、柔らかな触り心地で家族のような存在を目指すものです。「命があると別れが来て悲しいけれど、ロボットなら考えてもいいかも」。喋るぬいぐるみロボットの新聞広告を目にした際に、祖母が発した言葉です。「LOVOT」は体温を保ち、より生き物に近い存在です。事情があってペットを飼えない人にとっては有り難いのではないでしょうか。

ラボット「えだまめ」(12日筆者撮影)

機能性重視型から愛玩型まで、人間との多種多様な関わりを意識させられた一日でした。人型ロボット「ASIMO」のように、これからも日本の最先端技術が世界に認められる存在であると同時に、あらゆる人々の救いになることを願っています。

 

参考記事:

2018年 12月19日 朝日新聞デジタル 「触るとぬくもり、なつくロボット ベンチャー開発、予約始まる」

27日付 読売新聞朝刊 東京14版 31面 「[東京ホットぷれいす2022]皆サン、バイバイ=東京」

27日付 日経MJ 『よーじや、「京都過ぎない」に転換 コロナで売上7割減』

参考資料:

https://manseiki.com/news/摂食嚥下障害の治療やオーラルフレイルの啓発に–