特定有人国境離島地域という単語をご存知でしょうか。日本の領海や排他的経済水域を管理する活動の拠点となる有人の離島のうち、「継続的な居住が可能となる環境の整備」が特に必要な島で構成される地域のことを指します。佐渡島(新潟県)や屋久島(鹿児島県)など、その対象は有人国境離島地域保全特別措置法に明記されています。
読売新聞は3日、この「特定有人国境離島地域」を取り上げました。政府が観光振興への支援を強化する方針を決めたというのです。理由は、新型コロナウイルスの影響による宿泊客の減少で特に離島の経済が大きな打撃を受けているから。観光庁のデータを引用し「コロナ禍前の19年と21年の4~6月期の宿泊者数を比較すると、全国は約58%減だが、国境離島は約75%減となっている」とその深刻さを訴えています。
支援事業は早ければ年度内にも開始する予定で、豊かな自然や歴史、新鮮な水産物といった離島ならではの観光資源を活用した取り組みについて自治体に事業費の55%を補助します。
観光業への支援強化は、国境離島の人口減少や無人島化を防ぎ、領海の保全につなげることも狙っています。「政府は、2016年成立の有人国境離島地域保全特別措置法に基づき、国境離島の社会・経済活動の維持を図り、国境に近い離島を無人島にしないための対策を進めてきた。無人島になってしまうと、周辺海域の警備などの拠点としての活用が難しくなるなど、領海保全に支障を来す可能性があるためだ」と読売新聞は語ります。
特定有人国境離島地域には、筆者の地元長崎県対馬市も入っています。多くの韓国人観光客で賑わっていた対馬もコロナ禍になって一時期は閑古鳥が鳴いていました。最近でこそ日本人観光客が徐々に増え始め復興の兆しが見えてきましたが、第6波への懸念が強まっている状況で、この先どうなるかは分かりません。政府には引き続き支援を求め、自治体にはその補助を有効に活用してほしいです。そして多くの人が国境の島々に興味を持ってもらえると、離島育ちの筆者は嬉しく思います。
参考記事:
1月3日読売新聞デジタル「「国境の離島」無人化防げ、主要産業の観光業を支援へ…コロナで宿泊者激減」