情報はどこに…?「二転三転」コロナ規制に翻弄される者たち

旅行の一番の醍醐味は、旅立ちの前である。観光地を調べ、ホテルを探し、計画を立てている時こそ、色々な想像に胸を膨らませる至福の時間だ。しかしコロナ禍の現在、旅行前の準備が必ずしも幸せなものだとは限らなくなってしまった。

「少しずつ規制も緩まってきたし、コロナもそろそろ収束に向かっているのかも…?」

そんな期待を裏切るかのごとく現れたオミクロン株によって、年末の旅行歓迎ムードは一転。クリスマスから正月にかけての渡航ラッシュに備えて、各国は次々と規制を強化し始めた。今までならワクチンパスポートだけで入れた国が出国前のPCR検査または抗原検査を求めるようになったり、急に自主隔離が必要になったり。国外への旅行を計画していた渡航者は、予定外の変更に戸惑うこととなった。

 

◆正確な情報はどこに…?

数週間前からスペイン・ポルトガルへの飛行機を予約していたアイルランド在住の筆者も例外ではなかった。ニュースで規制が強化されていることを知り、入国に必要な書類をインターネットで調べてみても、どのサイトが正式であり、最新であるのかが分からない。「2021年9月〇日改訂」「2021年3月〇日改訂」と変更だらけ。心もとないので、日本大使館に連絡して書類の原本を英語で送ってもらうも、条件が複雑すぎて解読できず。結局のところ出発の12時間前に空港まで直接出向いて確認する羽目に。コロナ規制の新情報が錯綜する中で、われわれ観光客は真っ先にその混乱の渦に巻き込まれることになった。

 

どの国から来るのか、どの国へ行くのか、ワクチン接種は済んでいるのか、証明書は国際的に認められるものか。様々な条件によって必要とされる書類が全く異なる。例えば12月20日時点でワクチン接種済みの者が渡航する場合、(アイルランドから)スペインは抗原検査の必要はないが、(スペインから)ポルトガルへ行くには必要だったり、(ポルトガルから)イギリスへは抗原検査に加えて入国後の検査キットの事前購入が必要だったりする。

抗原検査は30ユーロ(4000円)ほど、PCR検査は150ユーロ(20000円)ほどと、決して安くない値段である。できれば買うことは避けたい一方で、万が一規則に違反すると、入国拒否だけでは済まされず、罰金を取られる可能性もある。不確定要素が多すぎるまま旅行に乗り切るのは、神経を非常にすり減らすことになるだろう。

 

◆検査待たされ、渡航間に合わぬ可能性も

やっとのことで必要事項に関する確実な情報が得られたとしても、まだ安心はできない。通常、抗原検査は30分~2時間後、PCR検査は翌日に検査結果が分かるため、その待ち時間を踏まえたうえで十分な余裕を持って受けなければならないのである。

出国48時間前に行わなければならない抗原検査を受けるには、まずはクリニックを探すところから始まる。やはり旅行者が多いからか、前日に予約の取れる場所は限られている。空港にも検査会場は用意されているが、並んでいる人は多く、進みも遅い。なかには「ついこの間まで必要なかったのに先日急に規制が変わったのを知らなかった」と不満をこぼす人、「予約が必要なことを知らずに来てしまった。飛行機の出発までに検査結果が間に合わない」と会場のスタッフに訴えている人もいた。

ポルト空港(ポルトガル)で検査に並ぶ人たち ※1月2日筆者撮影

 

インターネットがこれほど発達しているにもかかわらず、「最新」で「正確」な情報を得ることは意外にも難しい。むしろ出回る情報が多いからこそ、本当に必要なデータが埋もれやすくなってしまっているのかもしれない。また、世界の「最新」の情報は英語であることが多く、日本語に翻訳されるのにはどうしても時間がかかってしまうのもたしかである。

旅行の醍醐味であるはずの準備は、緊張感のもとでストレスフルなものへと変わってしまった。しかしだからこそ旅先で存分に楽しむために、緻密な準備と情報収集の徹底を心掛けていきたい。